家族で駅近の賃貸マンションに住んでいる、私の友人・桃香さん(仮名)。子育てに適した利便性の高い環境で、今の暮らしに満足していました。ところが、「家は買うもの」と思っている義両親からの圧が強く……返答に困っていたそのとき、息子の思いがけない言葉が空気を変えてくれました。

満足している今の暮らし

私は夫と小学生の息子と3人で、駅近の賃貸マンションに住んでいます。家の近くにはスーパーやコンビニ、病院も揃っていて、日々の生活に困ることはほとんどありません。通勤や通学にも便利で、家族みんなこの暮らしに満足していました。

ただひとつ、少し気がかりだったのが義両親の言葉です。会うたびに「まだ家買わないの?」「いつまでも賃貸なんて……」と言われてしまうのです。

埋まらない価値観の差

このエリアで家を買うのは経済的にも現実的ではないことや、今の生活がとても快適であることを説明しても、義両親は納得しきれない様子でした。

「私たちのときは、結婚したらまず家を買ってたけどねぇ」「近所に住んでた〇〇くんも、最近家建てたって聞いたよ」と、話はいつも同じ方向に戻っていきます。

私は価値観の違いを感じるたびに、どう伝えたらいいのか分からなくなっていました。

息子の何気ないひと言

そんなある日、義実家でまた同じように家の話題になりました。「そろそろ考えたほうがいいんじゃない?」と義母に言われ、私がどう返そうか言葉を選んでいたとき……横で話を聞いていた息子が、ふと口を開いたのです。「僕、今の家すごく好きなんだけどな〜」

思いがけないひと言に、義母が「あら……そうなの?」と聞き返すと、息子は笑って続けます。「うん! 同じマンションに仲いい友だちもいるし」「引っ越したほうがいいの?」それは子どもの純粋な疑問でした。

少しだけ変わった空気

義母は「いや、そういうわけじゃないけど……」と少しトーンを落とし、「まぁ、今はそういう時代なのかもしれないわね……」と、小さくため息をつきながらもどこか納得したように頷きました。

そのやり取りをきっかけに、義実家で家の話が出ることは少し減りました。これまで何度も『家を買うこと』が常識のように話していましたが、初めて『子どもの立場』から暮らしを見ることができたのかもしれません。

今の生活や子どもの環境、そして時代の違いによって、考え方や常識は少しずつ変わっていくものなのだと感じた出来事でした。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年2月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。