生まれたばかりの息子
私が息子を出産したときのことです。夫の隆(仮名)とふたりで、「鼻は私に似てるね!」「目は俺かな?」なんて言い合いながら、息子の顔を見ている時間がとても楽しかったのを覚えています。
私は出産後すぐに、息子の写真を添えて両家の両親にLINEで報告しました。すると義母から返信があり、「おめでとう〜!!」「隆にそっくり!」「目も鼻も口も、見れば見るほど隆だわ〜!」とテンションの高いメッセージが届きました。
そのときは、(喜んでもらえてよかったな〜)と素直に嬉しく思っていました。
繰り返される「そっくり」
それからしばらくして、初めて息子を連れて義実家を訪れたときのことです。直接顔を合わせて息子の顔を見るなり、義母は笑顔でこう言いました。「やっぱり隆の子だわ〜!」「由美さんにはあまり似てないみたいね」
軽く受け流していたものの、その言葉が何度か繰り返されるうちに、私は少しずつモヤモヤを感じるようになっていきました。(私たちふたりの子どもなのに……)(なんだか、私だけ仲間外れみたいじゃない?)そんな気持ちが募っていったのです。
夫の思いがけない行動
そんなやり取りを横で聞いていた夫が、ふと口を開きました。「いや、由美の小さい頃にもそっくりだよ」その言葉に、義母は少し不思議そうに「え〜? そうなの……?」と首をかしげています。
すると夫が「ちょっと待ってて」と言って、なにやらカバンの中を探し始めました。取り出したのは、なんと私の幼少期の写真。
「え!? いつの間に持ってきてたの!?」と驚く私に、夫は笑いながら「お互いの赤ちゃんの頃の写真と、息子を見比べたら楽しいかなって思って」と言うのです。
少しだけ変わった空気
写真を並べてみると、義母も思わず「……あら、本当だわ」と声を上げます。「これ、由美さんと似てるわね」と素直に受け止めていて、さっきまでの勢いが少し落ち着いたのを感じました。
それ以降は「隆そっくり!」と一方的に言われることはなくなり、「ここは由美さんかな」「ここは隆ね」と、自然と両方に似ているという話になっていきました。
あのとき何も言えずにいた私にとって、夫のさりげないひと言と行動は、すっと気持ちを軽くしてくれるものでした。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2026年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。