これは、私の先輩であるベテラン保育士あい先生(仮名・30代)のクラスにやってきた男子大学生ゆうと先生(仮名)のお話です。一見、真面目そうなゆうと先生から繰り広げられる言い訳劇場。言い訳を並べて逃げ切れると思ったゆうと先生に突き付けられた、あい先生の冷ややかな一言とは……

真面目そうな実習生、しかし……

保育士には、未来の保育士を育てる教育実習生の指導という大切な役割があります。学生を温かく育てようとしますが、まれにとんでもない強者が現れることがあります。

ゆうと先生は、見た目は真面目で優しそうな青年でした。子どもたちとも一生懸命関わる姿に、あい先生は「良い実習になりそう」と安心していました。

しかし、実習中盤、誰もが苦戦する実習日誌の提出が滞り始めたことから、不穏な空気が流れ始めます。

衝撃のコーヒー事件

ついに日誌を提出しなかった日、理由を問われたゆうと先生はこんなことを言いました。「全部書いたんですが、コーヒーをこぼしてしまって文字が見えなくなったので、提出できません」

あい先生が「乾かして持ってきて。汚れていても評価はできるので」と諭しても、「絶対に見えないので無理です」の一点張り。

この日から、彼は嘘のような言い訳劇場を繰り広げるようになりました。

「できない」とセットで始まる言い訳劇場

翌日の部分実習でも言い訳が始まりました。「練習していたらピアノの蓋が急に閉まって指を挟みました。痛くて弾けません。だから今日の仕切りはできません」

あい先生がピアノなしで進める方法を提案しても、翌日、「自転車に足が挟まり、痛くて考えられませんでした」と回答。苦しい言い訳であることは明らかでしたが、あい先生は追求することなく、冷ややかな眼差しで静かに告げました。

「できないならそれで構いませんが、評価はできません。単位は出ませんが、それで良いですね?」ゆうと先生は取り返しのつかない空気に凍りつきましたが、事の重大さに気付いたのがあまりにも遅すぎました。

社会人に必要な真摯な態度

彼の言葉が真実だったのかはわかりません。しかし、シミだらけの日誌やケガを見せて謝れば、誠実さが伝わったかもしれません。

保育士である前に、ひとりの大人として「誠実であること」の大切さを思い知らされた出来事でした。

【体験者:30代・保育士、回答時期:2010年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Yoshi.H
保育士を経て、2児の育児をしながらライター業をスタート。これまでの職業経験から育児のテーマを得意とする。特に保育士時代の出来事や、視覚障害がある子どもの育児をする自身の経験、そして同世代のママたちの声をもとに、女性を元気づけるための発信を精力的におこなう。