今回は同僚の瑞枝さん(仮名・47歳)から聞いた職場での出来事をご紹介します。長く続いた上司の強い言葉に耐えてきた彼女が、あるきっかけで状況を見つめ直し、小さな行動を積み重ねていった話です。何気ない日常の中で感じていた違和感が少しずつ形になっていく過程には、多くの人が共感する部分があるかもしれません。

違和感を抱えながら働く日々

今の部署に配属されてからずっと、営業部長の高橋部長(仮名)は言葉がきつい人でした。最初は「厳しい人なのだ」と受け止めていたのですが、次第に様子が変わっていきます。

「なんでこんなこともできないの?」「使えないな」そんな言葉を、人前で投げられることが増えていきました。ミスではない場面でも感情的に責められ、周囲も気まずそうに黙る空気……。会議で名指しされるたび、胸の奥がじわりと重くなるのを感じていました。

限界を感じた出来事

ある日、体調を崩して早退を申し出たときのことです。「その程度で?」と一蹴され、言葉が出ませんでした。

帰宅後、これまでのやり取りを何度も思い返しました。「さすがにおかしいのではないか」そんな違和感が、はっきりとした疑問に変わっていきます。

同僚に相談してみると、同じように感じている人が複数いることが分かりました。そしてすすめられたのが、記録を残すこと。日付や発言内容を、静かに書き留めるようになったのです。

記録が動かした現実

数週間後、別部署でも同様の相談があったことをきっかけに、会社が内部調査を開始しました。ヒアリングで提出した記録は、他の社員の証言とも一致。これまで曖昧だった違和感が、はっきりとした事実として浮かび上がります。

高橋部長の、会議での発言内容や日常的な叱責は、パワハラと認定されました。一つひとつ書き留めていた言葉が、確かな証拠になったのです。

少しずつ変わる空気

その後、部長は役職を外れ、管理職から外れる処分となりました。部署では再発防止の研修も行われ、職場の空気は少しずつ変わっていきます。以前のように黙るしかなかった雰囲気は薄れ、安心して話せる空気が生まれ始めました。

振り返れば、長い間我慢してきた時間がありました。それでも、小さな違和感を見過ごさずに行動したことで、現実は確かに動いたのです。

【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2026年4月】

EPライター:佐藤栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。