違和感のはじまり
私は教育係として、新人の山川さん(仮名)に電話応対を教えていました。最初は誰でも戸惑うものだと思い、基本から丁寧に説明していたのですが、どこか他人事のような様子が気になっていました。
説明中もメモを取ることはほとんどなく「1人で応対できるかな?」と不安がよぎります。そのときは“まだ新人だから仕方ない”と自分に言い聞かせていたのですが、後日、その不安が的中する出来事が起こるのです。
電話に出ない理由
ある日、会社の電話が鳴ったときのことです。近くにいた山川さんは電話に出ようとしません。同じような場面が続いたため「出てみようか」と声をかけると、山川さんは「慣れている人が出た方がタイパがいいと思って」と一言。
そして「電話する側も、その方がスムーズで助かると思うんです」と続けたのです。その自信満々な口調に、私は一瞬言葉に詰まりました。
正論すぎる一言
その場の空気が止まり、周りもどこか言いづらそうな雰囲気で、誰も口を開きません。すると、同僚の川田くん(仮名)が静かに口を開きました。「じゃあさ、1年後に新人が入ってきたらどうやって教えるの?」
続けて「そうやってタイパ重視して、電話対応できない人が増えたら会社として回らなくなる。そしたら会社の信用ガタ落ちでコスパも最悪じゃない?」と淡々と言ったのです。
効率だけでは回らない
川田くんの一言で、その場の空気は一気に変わりました。それまで正論のように話していた山川さんも、さっきまでの勢いが嘘のように「すみません」と小さくつぶやきました。
その後はしぶしぶながらも電話に出るようになり、少しずつですが自分から動く姿も見られるようになりました。私にとっても、効率だけでは回らない“仕事の本質”を考えさせられる出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Yuina.T
ライター業をしながら、実は現役の保育士でもある。その実体験を元にしたエピソードをSNS発信すると好評を得て、執筆者としても活躍するように。幼稚園教諭や歯科受付などの、多彩な職業も経験。読者からの共感の声やお悩み相談、体験談が届き、それらも元に執筆中。育児エピソードや義母・夫とのバトルなど、ママ世代から共感を呼ぶリアルな体験記事が人気。