ママ友との『推し活』
私は、幼稚園で知り合ったママ友・麻衣さん(仮名)と仲良くしていました。きっかけは、同じアイドルグループを推しているという共通点です。
子どもたちも同い年で自然と会う機会も多く、園の送り迎えやちょっとした合間に「この前のテレビ見た?」と話したり、YouTubeの動画を教え合ったり。ライブになかなか行けない分、そうやって日常の中で『推し活』を楽しんでいました。
ライブとグッズの約束
あるとき、私たちが住んでいる地域でライブが開催されることになりました。私は夫に子どもたちをお願いできることになり、久しぶりに現地で参加することに。一方で麻衣さんは妊娠中ということもあり、今回は断念することにしたそうです。
そこで私は、「じゃあ、会場限定のグッズよかったら買ってこようか?」と提案しました。すると麻衣さんは「いいの? 嬉しい!」と喜んでくれて、ライブには行けなくてもグッズが手に入るならと、楽しみにしている様子でした。
ライブ前日、思わぬやり取りに
ところが、ライブ前日のことです。娘が急に発熱し、病院でインフルエンザと診断されました。看病も必要ですし、自分自身も感染している可能性があります。悩んだ末、私はライブを諦めることにし、すぐに麻衣さんへメッセージを送りました。「ごめんね、娘がインフルで……今回は行けなくなっちゃった」
そこで返ってきたのは「え!? じゃあグッズは?」と、想像とは違う言葉でした。私は少し戸惑いながら、「今回は行けないから、買えなさそうで……ごめんね」と伝えました。
すると麻衣さんはさらに、「娘ちゃん、もともと旦那さんにお願いするんじゃなかった?」「春奈さんだけ行けないの?」と続けるのです。
少しずつ募るモヤモヤ
私は困惑しました。確かに最初はその予定でしたが、インフルエンザとなれば話は別です。(もし自分も感染していたら……)(万が一、会場で誰かにうつしてしまったら……)そう考えると、行くという選択肢はありません。
麻衣さんは納得しきれていない様子でしたが、私は「今回はごめん」と言い切るしかありませんでした。結局そのやり取りの中で、「お大事に」や「大丈夫?」といった言葉は最後までなかったのです。そのことが、私の中で少し引っかかりました。
距離感を考えるきっかけ
同じ『推し』で繋がり、楽しく話せていた関係。でも、いざというときに出てくる言葉や優先するものは、人によってこんなにも違うものなんだと考えさせられました。
その後も関係が途切れたわけではありません。ただ、自分にとって当たり前の判断が相手にも同じとは限らないのだと、距離感を考えるきっかけになった出来事でした。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2026年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。