ひっきりなしに電話が鳴る職場で
私が勤務している薬局には、電話が一つしかありません。患者さんからの薬の飲み方についての質問や、病院やケアマネジャーからの連絡など、いつも様々な内容の電話がかかってきます。
さらにこちらからも医療機関に問い合わせることがあるため、回線が常に込み合っている状態でした。
関係のない営業電話
そんな中でかかってきて困るのが、業務とは直接関係のない電話。薬局にはなぜか、マンション投資を勧める営業電話がよくかかってきます。
「〇〇さん(薬局長)はお手すきでしょうか」と言われますが、用件を聞いてもはっきり答えません。あとで会社名を調べると、たいていマンション投資の斡旋業者でした。
休憩時間にまで
ある時から、20代くらいの男性営業マンが頻繁に電話をかけてくるようになりました。彼の会社もマンション投資関係のようです。しばらく断り続けていたある日、ついに薬局の休憩時間に電話をかけてきたのです。
私の薬局では休憩時間を設けており、営業を中断しています。店の中で残っている仕事を片付けたり、スタッフが順番に休憩をとっている時間です。
営業マンは「今は薬局を閉めている時間ですよね。 薬局長は休憩中ですか?」と話し始めます。
営業マンの失言
ちょうど休憩中だった薬局長へ電話を代わりました。すると営業マンは嬉しそうに言います。「いつも忙しそうですが、休憩時間なら患者さんに邪魔されずに話を聞いてもらえると思って」
その言葉を聞いた薬局長は激怒。「患者さんが邪魔をするとはどういうことですか? 私たちは患者さんの健康を願って仕事しています。邪魔なのはあなたの電話のほうですよ」強い口調で、さらに話し続けます。
「たとえ薬局の休憩時間でも、患者や他の医療機関などから緊急の連絡が入ることもあります。患者の命にかかわる内容かもしれません。電話がつながらなかった結果、対応が遅れたとしたら、あなたは責任をとれますか」
スタッフ全員が称賛
電話先の営業マンは聞き取れないくらいの小声で何かを呟き、電話を切ったそうです。
普段は温厚な薬局長が怒っている姿を見て、私たちは驚きを隠せません。しかし一連のやりとりを聞いて納得。薬局スタッフ全員が薬局長の対応を称賛したのでした。
それ以降、例の営業マンからの電話はありません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:伊村 えりか
薬剤師歴12年。就業を通じて多くの人生や、悩み、奇跡などに直面し、それらを伝えるべく執筆活動を開始。職場や同世代の女性との会話をもとに、医療現場の裏側から家族の「あるある」まで、多岐にわたるテーマで執筆を手がける。子育てサイトのアンバサダーを務め、身近な視点を活かしたコラムを執筆中。