故人に思いを馳せる、お墓参り。大好きな故人であっても、実際にお墓まで行くのは遠方だったり、多忙だったりで中々難しいことも。たまにしか行かないと、お墓の正確な場所もうろ覚えになりがちです。案内してくれる人がいれば、迷わずに行けるのでしょうか……今回は、私の友人の実体験をご紹介します。
7年ぶりの帰国
私は当時、海外勤務をしており、コロナ禍もあって7年ぶりに一時帰国しました。夫は仕事の都合で遅れて帰国予定だったため、0歳の息子と二人きりでの帰国です。
空港からバスに揺られて2時間、義父が迎えに来てくれるはずでしたが、渋滞と仕事でさらに2時間遅れるとのこと。義実家は田舎の奥の方にあり、近くには時間を潰せる場所もありません。私は久しぶりに、時間潰しもかねて義祖父母のお墓参りに行くことにしました。
特別にと案内され
タクシーに乗り、霊園に着いた時にはすでに夕方。門は施錠されており、別の入り口も閉ざされていました。困っていると住職らしき人物が現れ、「本来は閉門後ですが、海外から来られたなら特別に入れて差し上げます」と鍵を開けてくれたのです。
「ただし、下の者に見つかると示しがつかないので裏の近道から行きましょう」と案内され、私はスーツケースを門に置き、息子を抱っこ紐に入れてついて行きました。
険しい山道
険しい山道を進む住職の背中はどんどん遠ざかり、私は疲れから遅れがちになります。すると「後ろは振り返らないで、早く進んでください」と告げられ、急に鳥肌が立ちました。
記憶にある霊園はこんな山奥ではなかったはず。息子が急に泣き出し、足を止めると、住職は「早く!」と大声で催促。子供が泣いているのに急かす態度にますます不審を覚えたその時、入り口の方から「誰かいるんですかー?」という声が。
入口の方へ振り返ると、さっきまで前方にいたはずの住職がすぐ背後にいて「振り向くなと言っただろ!」と怒鳴ったのです。しかしもう一度住職の方を振り返っても、そこには誰もいませんでした。
今も解けぬ謎
必死に「助けてください!」と声を張り上げると、霊園の管理人が駆けつけてくれました。事情を説明すると「住職は今日一日、不在ですよ」とのこと。息子の泣き声が山奥から聞こえたので、不思議に思い声をかけたのだと教えてくれました。
気づくと、あたりを見渡しても誰もいません。さらに門に置いたスーツケースは、数分間置いただけとは思えない程、枯れ葉や泥にまみれていました。まるで何年もそこに放内してあったかのように。
義父も駆けつけてくれ、警察に通報しましたが、結局住職に扮した人物は見つからず、今でも正体は謎のままです。
遭遇したのは変質者だったのか、それともこの世の者ではなかったのか。今でも答えは出ていませんが、息子の泣き声が私を現実へ引き戻してくれたことだけは確かです。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。