お薬代の支払い待ち
ある日、新規患者のCさん(20代男性)が来局されました。お薬の説明や指導を終え、残すは会計のみ……そんな場面で、急にCさんが慌てだしました。どうやら財布を持っていなかったようです。
支払い前にお薬は渡せません。「すみません、ちょっとお金取ってきます!」と言い残してCさんはそのまま外へ。すぐ戻るかと思いきや、姿を見せることはありませんでした。
処方せんには有効期限があります。私の勤める薬局では、4日以内に引き取りがないと無効となるルールでした。電話してもつながらず、留守電にも折り返しはなし。ついに処方せんの有効期限は切れてしまいました。
忘れた頃に再来局
Cさんが再来したのはそれから1週間後のことです。しかし、もう渡せるお薬はありません。事情を説明すると、Cさんはみるみる不機嫌な表情に。「4日以内なんて聞いてない」「知らない電話番号は出ないし留守電も聞かない」と、憤っている様子でした。
先日来局されたとき、Cさんは間髪を入れずに外へ飛び出したので、引き渡しの詳しいルールは説明できていません。しかし、連絡もつかないことにはこちらもお手上げです。Cさんと私で、話は平行線を保ったままでした。
お薬よりも気になること
話を続けるなかで、私はふとCさんに「あること」を尋ねてみました。「ところで、その後の体調はいかがですか?」意表をつかれたような表情のCさん。少し考え込んで、こう答えてくれました。「そういえば……もう調子良くなってるわ」
Cさんに処方されていたお薬は数日分で、症状が落ち着けば不要のものでした。そもそも自分にはもう必要ないと分かると、すんなり納得して帰っていきました。
病状は日々変わる
Cさんには「病院のお薬は、必ず飲まなければいけない」という認識でもあったのかもしれません。もしそうなら早めに戻ってきてほしかったですが、結局すべて丸く収まりホッとした出来事でした。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2020年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:S.Takechi
調剤薬局に10年以上勤務。また小売業での接客職も経験。それらを通じて、多くの人の喜怒哀楽に触れ、そのコラム執筆からライター活動をスタート。現在は、様々な市井の人にインタビューし、情報を収集。リアルな実体験をもとにしたコラムを執筆中。