いちご狩り農園での受付
私がいちご狩り農園で短期アルバイトをしていたときの話です。いちごの種類が豊富で、広々としたハウスが建ち並ぶその農園は、毎年賑わっていました。1時間食べ放題のシステムで、料金は年齢ごとに分かれています。3歳までは無料、4歳以上は料金が発生する仕組みでした。
受付では、来園したお客さんの人数と年齢を確認し、料金を案内するのが仕事でした。特に子どもの年齢は金額に関わるため、必ず確認するように言われていたのです。
子どもの年齢確認
ある日、家族連れのお客さんがやってきました。30代くらいのご夫婦と、小さな女の子がひとり。見た感じ女の子は3歳か4歳くらいで、料金がかかるか判断がつきません。そのため私はいつも通り丁寧に聞きました。「お子さんのご年齢はおいくつですか?」
するとお母さんがにこっとして、「3歳です〜」と答えました。私は「では料金は大人おふたり分で……」と会計を進めようとしました。
女の子の、思わぬ『自己申告』
そのときでした。お母さんの横にいた女の子が、ぱっと顔を上げて言ったのです。「え? わたし4歳だよ〜!」そしてさらに、得意げに続けました。「このあいだ、4歳のお誕生日だったんだ!」
受付カウンターの前で、一瞬時間が止まったように感じました。私は思わず固まってしまい、ご夫婦も少し気まずそうに顔を見合わせています。
空気が少しだけ変わった瞬間
数秒の沈黙のあと、お母さんが小さな声で言いました。「……間違えました。4歳です」
私は「かしこまりました」とだけ答えて、4歳の料金で会計をやり直しました。女の子は何が起きたのか分からない様子で、「いちごいっぱい食べる〜!」と嬉しそうに農園のほうへ走っていきます。その無邪気な後ろ姿を見ながら、張りつめていた空気がふっとほどけた気がしました。
受付の仕事をしていると、いろんなお客さんに出会います。あの日の彼女の『正直すぎる自己申告』は、今でも思い出すと少しだけ笑ってしまう、印象に残っている出来事です。
【体験者:20代・女性アルバイト、回答時期:2023年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。