頼りになるパートの先輩
会社の同じ部署に、週4日のパートで働く山崎さん(仮名)という女性がいます。山崎さんは仕事がとても丁寧で、スピードも速く、ミスもほとんどありません。
私が入社したばかりの頃も、仕事の進め方をひとつひとつ教えてくれて、ずいぶん助けてもらいました。分からないことを聞くと、作業中でも手を止めてきちんと向き合ってくれる人で、頼りにされている存在でした。
そんな山崎さんなので、上司との面談のたびに「フルタイムで働いてくれないか」と声をかけられているらしいのです。
フルタイムにならない理由
でも山崎さんは、そのたびにやんわりと断っていると聞きました。フルタイムの方がもちろん収入は上がりますし、山崎さんほど優秀な人がパートなのは正直もったいないなと感じます。私はある日、休憩時間にそれとなく尋ねてみました。「山崎さんって、フルタイムにならないんですか?」
すると山崎さんは、少し笑いながらこう言いました。「私ね、『丁寧な暮らし』を大事にしたいのよね〜」意外な答えに、思わず詳しく聞き返しました。
理想的な「丁寧な暮らし」
話を聞くと、朝はご飯を炊いて、魚を焼いて、味噌汁を作る。季節の食材を取り入れた食事を楽しみながら、家の中も毎日きれいに整える。そんな日々の積み重ねが、自分の気持ちを整えてくれるのだと教えてくれました。
そして山崎さんは少しだけ真面目な表情になり、こう続けます。「その生活と仕事、どっちも大事にしようと思ったら……私にとっては週4がベストなの」その言葉を聞いたとき、私は少し驚きました。
自分に合った働き方
これまで私はどこかで、『働けるなら、できるだけ働くもの』という考えが当たり前になっていた気がします。フルタイムで働くことが自然で、それが一番しっかりしている選択だと思い込んでいました。でも山崎さんの話を聞きながら、働くことだけが人生の中心ではないのかもしれないと感じました。
自分にとって心地よいペースを選びながら、仕事もきちんとこなしている山崎さん。その姿は、私にはとても素敵に見えました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。