自分が年を重ねるにつれ、自身の親も同様に加齢されていくのは避けられない事実。しかし、時にはそんな現実から目をそむけたくなることもあるでしょう。ましてや普段と違う違和感を感じた時は、なおの事で……今回は、私のお客様に聞いたエピソードをご紹介します。

強がりな母

私には、70代の母がいます。父は数年前にすでに亡くなり、母は一人暮らし。認知症などはなく元気ですが、やはり一人で暮らしていることが心配でした。

母は毒舌で「一人でポックリ行くから大丈夫!」と笑いながら言うものの、私には強がりにしか見えないのです。

遺影を撮りたがる母

ある日突然「遺影を撮りたい」と言い出した母。さらに「撮影前にはエステや美容院にも行きたいし、洋服も新調したい」と言うのです。

「遺影」という言葉に私は不安を覚えましたが、母は「友人の間で流行っているだけ。人間ドッグも毎年受けて異常なしだから!」と笑っていました。

ところがその日を境に母は急に活動的になり、スキンケアグッズを新調したり家具を買い替えたりと、生活が華やいでいったのです。

母のカミングアウト

夫や子供たちも「おばあちゃん急にどうしちゃったの?」と心配するほど。そんなある日、父の法事で、実家を訪れた時の事。私はほろ酔いの勢いで「もし余命宣告されているなら教えてほしい。長生きしてよ」と涙ながらに母に伝えました。

夫や子供たちももらい泣きし、「ばあば死んじゃいやだ」と号泣。すると、母は少し言いづらそうに「実は彼氏ができたの」と告白したのです。

驚きのあまり、言葉を失う私たちに「籍を入れたり同棲したりはしないよ。お茶したり美術館に行ったりしているだけ。美容院やエステに通うのを怪しまれると思って遺影撮影って言ったの。遺影も実際、撮影したしね」と続けました。

生きる力の源

母は“怪しまれるから”と言っていましたが、おそらく言いづらかった一番の理由は、照れくさかったのだと思います。お相手は昔から知っている近所のおじいさんで、もちろん独身。母の恋人発覚に驚きましたが、以前よりも元気で美しくなった母の姿を見て、私も家族も一安心。

恋の力が母を輝かせているのだと感じ、いつまでもそのパワーで元気でいてほしいと願わずにはいられませんでした。恋のパワーは年齢を問わず、何歳になっても有効なのだと、改めて実感したエピソードです。

生きる力の源は人それぞれ。恋に限らず推し活や趣味など、自分にとって輝く何かがあれば、人生はより彩り豊かになるのでしょう。

【体験者:40代・パート勤務、回答時期:2026年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。