コロナ渦以降、急速に広まった在宅勤務。中でもオンライン会議は今や主流と言っても過言ではありません。しかし住宅状況によってはオンライン会議に参加するのが一苦労なことも。ましてや小さな子どもがいればなおのことで……今回は、私のお客様のエピソードをご紹介します。

学級閉鎖

私には2歳の息子がいます。先月、息子のクラスが学級閉鎖で、私は自宅からオンライン会議に参加することになりました。

息子自身は元気そのもの。「会議の1時間だけ、動画を見ながら静かにしていて」とお願いしたものの、開始5分でウェブカメラに映り込もうとしたり、キーボードを叩いたりと妨害が止まりませんでした。

映りこんでしまった息子

会議の内容上カメラをオフにできず、私は苦戦。他の参加者は「気にしないで」と言ってくれましたが、内心どう思っているのか不安でした。

そんな会議中、部長のカメラに奥様らしき女性が映り込み、お茶を渡す様子が見えます。そして、その奥様が私の映像に気づき「あなた、子どもを抱っこしながらお仕事されてるの?」と声をかけてきたのです。

唐突な質問

「すみません」と平謝りする私に、奥様は「時代ねえ。こんな小さい子と働くなんて」と続けました。さらに謝る私に「その子、人形劇は好きかしら?」と唐突な質問。私は予想外の質問に思わず「見たことないので分からないです」と忖度もできずそのまま回答。

すると奥様は「私、人形劇の劇団長なの。今から会議中、無音で人形劇をやって息子ちゃんの注意を向けておくわ。あなた、それでよいわよね?」と提案。

“あなた”が部長を指しているのか、私を指しているのか分からず、部長も私も思わず「はい」と二つ返事をしました。

会議が終わって

奥様の無音の即席人形劇に息子はくぎ付け。お陰で会議は和やかな雰囲気になりスムーズに進みます。予定よりかなり早く終了し。私は集中して参加できました。

会議後、感謝を伝えると奥様は「昔から口調が強いってよく言われてきて。それを直したくて人形劇を始めたらハマっちゃって団長にまでなっちゃったの(笑)。子育てもして仕事もして、本当に素晴らしいわ。有休ちゃんと取れてる? パワハラされたらいつでも言ってね」と激励してくれたのです。私は目頭が熱くなりました。

働く母親の孤独を、思いがけない人の優しさが救ってくれる瞬間がある。批判ではなく共感と応援を受けたこのオンライン会議を、私は生涯忘れることはないでしょう。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。