「女性の活躍推進」が強く叫ばれ始めていた時代の、職場での私の実体験です。前向きなはずの取り組みが、別の違和感を生む場面もありました。働き方の選択肢があることの意味を、改めて考えさせられた出来事です。

女性活躍推進の過渡期

営業部署にいたころの実体験です。当時は世の中的にも「女性の活躍推進」が盛んに謳われており、私の会社でも事務職から営業担当へと配置転換される女性が増えていました。

会社側は「女性社員の選択肢を増やすため」「やりがい向上のため」と説明し、勉強会や説明会を重ねながら、女性営業の育成に力を入れている時期でした。

期待を集めた講演会

そんな中、女性の営業担当として初めて役員になった先輩・中村さん(仮名・50代女性)の社内講演会が開かれました。若手女性社員は全員参加。

もともと営業職に懐疑的だった人たちも、「頑張れば正当に評価されしっかり昇格できるのだ」と、少し前向きな気持ちで話を聞いていました。男性上司たちも「第一線で活躍してきた人だ」と誇らしげでした。

示された一つの成功例

中村さんの話は、「男性と対等に働くため20代後半からプライベートは捨てた」「土日もお客様に呼ばれればすぐ駆けつけ、飲み会やゴルフなど全力で参加した」「結婚も出産もしなかったが走り続けてきたので後悔はない」というものでした。

その努力が評価につながったという言葉に、尊敬の声が上がる一方で、「そういった働き方を望んでいるわけではない」「選択肢が増えるどころか狭まる感覚がある」と戸惑う声もありました。中村さんを否定する人はいませんでしたが、感じ方は人それぞれでした。

自分に合う道を選ぶ

中村さんの歩みは素晴らしく、評価されるべきものです。ただ、「ここまでやらなければ評価されない」という一つの見本が示されたことで、私は自分に合う道を選ぶ覚悟ができました。その後転職し、今は子どもにも恵まれ、仕事と生活のバランスを取りながら働いています。

目指すゴールが違うだけ。どの選択も間違いではなく、選べること自体が働き方の自由なのだと感じた出来事です。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2020年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。