バレーが繋いでくれた出会い
私は夫の慎太郎(仮名)と、社会人バレーサークルで出会いました。汗だくになってボールを追いかけた楽しい時間がきっかけで付き合い、結婚し、今は1歳の息子がいます。サークルの活動は夜がほとんどで、息子が生まれてからは、私は顔を出せていません。
一方で夫は、仕事終わりに月に数回変わらず参加しています。バレーが好きなのはお互い様。身体を動かしたい気持ちも同じです。息子だって、ふたりの子ども。なのに、なぜか夫のほうが当たり前のように行けている現実に、私は小さな引っかかりを抱えていました。
久しぶりの体育館で
ある日、珍しくサークルの集まりが土曜の日中にあると聞き、家族3人で顔を出すことにしました。久しぶりに入った体育館の雰囲気が懐かしくて、胸がじんわりします。
「佐江ちゃん久しぶり〜!」「元気にしてた?」と、なかなか会えていなかったみんなが明るく迎えてくれました。「最近ずっと来てないね! まだ産後で身体きついの?」と聞かれ、私は思わず、「いや、私もバレーしたいんだけどね……」とこぼしてしまいました。
仲間からのひとこと
すると、それを聞いた周りはあっさりと、「え、慎太郎と交代で来たらいいじゃん!」「慎太郎ばっかりズルいよね〜?(笑)」と。冗談まじりでしたが、どこか当然のことのような言い方でした。
私はその瞬間、胸の奥に溜まっていたものがふっと軽くなるのを感じました。母になったら、好きなことを我慢するのが自然だと思い込んでいたのかもしれません。隣を見ると、夫が少し気まずそうに笑っています。(あ、今初めて気づいた顔をしたな……)と、私は心の中で思いました。
夫からの「交代にしよう」
その日家に帰ってから、夫はぽつりと、「今度から交代で行こうか」と言ってくれました。仲間の何気ないひとことが、私たちのバランスを見直すきっかけになりました。
母になったからといって、自分の好きなことを後回しにするのが『当たり前』になる必要はない。そう思えたあの日の体育館の光景と、仲間たちの言葉を私はきっと忘れないと思います。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2026年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。