「繁忙期だからな!」
私は美容師として働いています。現在第二子を妊娠中で、ある繁忙期のタイミングでインフルエンザに感染しました。高熱と倦怠感に加え、お腹の赤ちゃんへの影響も心配で、不安でいっぱいでした。それ以上に怖かったのは、この状態でお客さんに接して何かあったらどうしようということでした。
職場に連絡し、インフルにかかったため休みたいと伝えましたが、店長から返ってきたのは「繁忙期だからな!」という一言でした。体調や妊娠への配慮よりも、忙しさを優先されたように感じました。
結局、休めたのはたったの1日だけで、無理を押して出勤することになり、心身ともに追い込まれていました。
奥さんの一言で空気が変わった
私の職場は夫婦経営の美容室で、店長である夫と同じ職場で働く奥さんがいます。インフルと診断された翌日は奥さんが出勤しておらず、顔を合わせることはありませんでしたが、翌々日、職場で奥さんと顔を合わせました。
「どうしたの?」と声をかけられ、「実はインフルで……」と説明した瞬間、奥さんの表情が一変しました。「はああああああ???」と信じられないという反応を見せ、そのまま店内で店長に向かって怒鳴りました。
「おい!パワハラ店長!!!」「働いてくれてる人を大事にできんで、どういうことや??」「そんなんなら、辞めてしまえ!!」普段は穏やかで優しい奥さんがここまで怒りを露わにする姿は初めてで、その場にいた全員が言葉を失いました。
奥さんは「妊娠中でインフルの人を無理に働かせるなんてありえない」とはっきり言い切り、店内の空気は一気に変わりました。店長は何も言い返せず、黙り込んでいました。
「働く人」としてどう扱われるか
私はその場でただ立ち尽くすしかありませんでしたが、正直なところ、自分の体調よりも、働く人としてどう扱われたかが一番つらかったのです。忙しいのは分かります。でも、妊娠中で高熱の中、「繁忙期だから」と言われたことが、心に深く残りました。自分は人手の一部でしかないのだと感じてしまったのです。
しかし奥さんの言葉で、「守ってくれる人がいる」と初めて思えました。
その後、変化した職場のルール
この出来事のあと、職場の体調不良時の対応は明らかに変わりました。発熱や感染症の疑いがある場合は無理に出勤させないこと、特に妊娠中のスタッフには必ず配慮することが、ミーティングで共有されました。店長も改めて「判断を誤った」と謝罪し、今後はまず体調を優先する方針を示しました。
それ以降、体調不良を理由に休むことに対して強く引き止められることはなくなり、私自身も安心して働けるようになりました。
あの日の奥さんの怒りは、単なる感情ではなく、職場を守るための本気だったのだと今では思っています。人を大切にするかどうかは、言葉よりも行動で伝わるのだと強く感じた出来事でした。
【体験者:20代・女性美容師、回答時期:2026年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。