産休明け、戻った場所で待っていたもの
私は産休から復帰し、以前所属していた部署に戻ることになりました。復帰直後、仕事を教えてくれたのは派遣社員のあつこさん(仮名)でした。あつこさんはいつもニコニコしていて、周囲から頼られる愛されキャラの存在です。実は産休に入る前、私は自分の担当業務をあつこさんへ引き継いでいました。
ただ、産休中の彼女の働きぶりについては詳しく知らず、復帰してから初めて「実質的に業務を回していたのはあつこさんだった」ということを知りました。しばらくして、あつこさんは別部署へ異動することになり、私はそのまま業務を引き継ぐ立場になりました。
「正社員なら当然できるよね?」の重み
あつこさんがいなくなった途端、周囲の空気が変わりました。ある社員が当然のように言ったのです。「これ、派遣の人がやってた仕事でしょ? 正社員なら当然できるよね」具体的な説明や丁寧な引き継ぎはほとんどないまま、仕事だけが次々と振られました。
分からない点を質問すると、「え? それくらい前からやってたでしょ」と返されることもありました。あつこさんのときは、周囲が自然とフォローしていた業務だったはずです。それなのに私は「正社員なんだから」「今さら聞くの?」という空気を向けられました。
その社員は「正社員なんだからここまでやってもらわないと困る」と何度も口にし、産休明けで仕事の感覚が戻りきっていないことへの配慮はありませんでした。
立場が変わるだけで、こんなにも違う
私は何度も理不尽さを感じました。派遣社員には優しく、正社員には厳しい。そんなダブルスタンダードに強い違和感を覚えましたが、「正社員だから」と飲み込むしかなく、必死に食らいつく日々が続きました。
産休明けの復帰は、仕事内容よりも人間関係のほうがずっとしんどかったのです。立場が変わるだけで、人の態度はこんなにも簡単に変わるのだと実感しました。
だからこそ、今は
あの経験があったからこそ、私は今、産休や育休から復帰する人がいたときは必ず声をかけるようにしています。「分からなくて当然だよ」「一緒に確認しよう」と伝えるようにしています。
立場が違っても、同じ職場で働く仲間であることに変わりはありません。復帰直後は、できるかどうかよりも「聞けるかどうか」が大切だと知ったからです。
あのときのモヤモヤは消えませんが、誰かに同じ思いをさせないことが、私にできる小さなサポートだと思っています。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。