「派遣なので」というクッション
営業部署にいた頃、田畑さん(仮名・30代女性)という派遣社員がいました。普段は腰が低く、にこやかで印象のいい人です。ただ、仕事になると「派遣なので」という便利なクッション言葉で逃げます。
客先への手土産の買い出しを頼んだ際、領収書の会社名の漢字が微妙に違っていた時も「間違えてましたか……? 派遣なのでよく分からなくて」と、申し訳なさそうにしながらも責任はふわりと手放します。
難易度が上がる買い出し
バレンタインの義理チョコの買い出しも「1人で行くと間違えそうで怖くて……派遣だし、1人で行けないです」と言い、若手の営業女性を同行させました。
結果として、ミスのフォローや同行対応をするのは15歳下の若手正社員。本来の業務時間を削りながら田畑さんをカバーしていました。
被害者ポジションの居心地
ある日みんなでランチ中、自然な流れでパートナーや結婚の話題に。「こんな仕事してるから結婚もできなくて。平日も疲れてるし、土日も婚活する気にならなくて」田畑さんは、原因はすべて“仕事”にあるような口ぶりでした。
派遣か正社員かで役割は違っても、分からないことを確認したり、工夫する責任は同じです。誰かに責められる前に先回りして被害者の立場を取る姿勢が、周囲に気を遣わせ、職場をじわじわと疲れさせていました。
何気ない一言の力
そんなある日、再び手土産の買い出しで若手社員を誘った田畑さんに、彼女は穏やかに言いました。
「今回から一人でやってみませんか。コンビニの買い物と変わらないですよ」呆れでも叱責でもない、シンプルな提案。田畑さんは少し戸惑いながらも、「やってみます」と答えたそう。
一歩踏み出したことで、周囲の空気も少しずつ変わりました。立場に隠れるか、挑戦するか。その違いは、思っている以上に大きいのかもしれません。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2017年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。