祖父母と孫という関係性は、親子とはまた違ったものを感じます。親に言われると腹が立つのに、同じことを祖父母に言われるとなんだか納得してしまう、という経験がある方もいることでしょう。今回は私のお客様の、そんな祖父と孫にまつわる不思議なエピソードです。
進路の衝突
数年前、高校生だった娘Mと進路について大きな衝突がありました。Mは海外留学を強く望み、私は日本の大学進学を希望。お互いの意見は平行線をたどり、家庭の中に緊張が漂う日々が続いたのです。
祖父の助言
そんな時、Mが大好きな祖父(私の父)が口を開きました。「もう少し語学力をつけてから海外に行ったらどうだ。その方が語学以外のことも学べるぞ」と。けれどもMは聞き入れません。
祖父はMと二人きりになった場面で打ち明けます。「黒いものが見つかってな。先が長くないんじゃ。じいの最期のお願いだと思って、1年でもいいから日本にいてくれないか」と。病気で先が長くないのだと思ったMは祖父と過ごす時間を優先し、語学の専門学校に進むことに決めました。
“黒いもの”
2年が過ぎ、卒業を控えたMは祖父に「元気じゃん! やっぱ海外行けばよかった」と冗談を言いました。すると祖父は真剣な顔で「最期のわがままに付き合ってくれてありがとう」とだけ答えました。
そのやりとりの翌日、Mが志望していた海外大学の近くで、銃乱射事件が発生したという報道が。犠牲者にはその大学の学生も含まれていると。驚いたMが祖父に問いかけると、「予期ではなく、そういうビジョンが見えた」と静かに答える祖父。“黒いもの”とは病気ではなく、未来の黒い影を感じ取っていたのです。
家族を守る父
思い返せば、父は旅行先や日程を急に変えることがありました。その頑固さは、悪い未来を避けるためだったのかもしれません。私は「父は昔から家族を守ってくれていたのだ」と強く感じました。
もし、これまでの父の助言を無視していたら、私達家族は今、この世にいなかったかもしれない。そう思うと父の言葉の深みを改めて感じるのです。
進路をめぐる親子の衝突は、父の不思議な力と愛情によって新たな形に収まりました。家族の絆を、未来につなぐことができたのです。
【体験者:50代・女性・会社員、回答時期:2026年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。