誰からも尊敬されていた、3人の子どもたちを育てながらも仕事ができるワーキングマザー。その努力と仕事への情熱が、いつの間にか周囲を追い詰めていきます。価値観のズレに気づいた瞬間、空気は大きく変わりました。

みんなの憧れだったスーパーママ

営業部署にいた頃の実体験です。同じ部署には、私より5歳年上のさちえさん(仮名・30代女性)がいました。彼女は2人の子どもを育てながらも仕事が非常に早く、社内からも取引先からも信頼されている存在でした。いつも優しくテキパキ働く姿は、誰もが尊敬し、憧れるスーパーママそのものでした。

無理を前提にした働き方

雲行きが怪しくなったのは、さちえさんが3人目のお子さんを出産し、職場復帰した頃から。3人の子どもを抱えながらフルタイムで働くのは、さすがの彼女でも相当大変だったようでした。

そこで彼女が編み出したのが、睡眠時間を削るという方法。子どもを寝かしつけた後の22時から24時、あるいは朝3時から5時まで仕事をしてから出社するなど、明らかに無理を前提とした生活を続けていました。

努力が「基準」になった瞬間

本人の頑張りは確かに素晴らしいものでしたが、次第にその働き方は「工夫」や「努力」として語られるようになり、さちえさんは周囲にも同じ姿勢を求めるように。

「私はこの方法で3人育てながら働けている」「子どもが1人なら余裕があるし大丈夫」といった言葉は、励ましのつもりでも、他のワーママたちには無理を正解とされているように感じられ、少しずつ疲弊していきました。

気づかされた“見えない事情”

ある日、さちえさんは同じ部署の30代の独身女性について、「独身で子育てしていないのにいつも早く帰って協力的じゃない」と発言。それを聞いた本人が事情を説明します。母の介護が必要で、父も体が弱いこと。家族で協力しなければいけないこと。「子育て以外にも、いろいろな事情を抱えている人もいるんですよ」と。

その言葉に、さちえさんはハッとした様子でした。価値観を押し付けていたことに気づいたようで、それ以降、働き方を人に強制する発言はなくなりました。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2018年1月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。