乳幼児を連れての乗車
子どもを連れて電車に乗った時の出来事です。4歳の長女の手を引きながら、0歳の次女を抱っこ紐で抱えて乗車しました。
電車内の席は全て埋まっていて、立っている人も何人かいるような状況でした。座れそうにないと判断した時、近くに座っていた50代くらいの女性が「ここ、よかったらどうぞ!」と席を譲ってくれたのです。
申し訳なさからお断りの言葉を伝えましたが、「いいのいいの、困った時はお互いさまだから!」と何ともさっぱりとした返事。その言葉に甘え、女性の善意をありがたく頂戴することにしました。
胸に刺さる言葉
その時です。「子連れってだけで楽に座れていいよな」すぐ近くから、そんな言葉がボソリと飛んできました。声の主は、10代後半くらいの若い男性2人組。
コソコソ話のつもりだったのか、わざと聞こえるように言ったのかは分かりません。しかし、当事者の私たちにはっきりと聞こえる音量でした。せっかく善意で席を譲ってもらったのに、私はなんとも居心地の悪い気持ちになりました。
「子連れで電車は、迷惑なのかな……」そんな後ろめたい気持ちになり始めたその時です。席を譲ってくれた女性が、すぐさま男性2人組の物言いを笑い飛ばしたのです。
情けは人の為ならず
「なぁ~に言ってんの! 私は自分のためにやってんのよ。人に親切にして気分よくなりたいだけよ~♪」あっけらかんとした明るい物言いに、男性2人組はポカン顔。そしてそのまま別の車両に移っていきました。
「そういうわけで、座ってくれてありがとうね」そう言いながら、彼女は次の駅で降りていきました。
胸に染みわたる言葉
あの女性の言葉がなければ、私はきっと、電車に乗るたびに思い出しては嫌な気持ちになっていたでしょう。もちろん、女性が本当に自分のためだけに席を譲ってくれたとは思えません。誰も悪者にせず、場の空気ごと軽くしてしまう彼女の言葉に、私は胸がすっと軽くなりました。
【体験者:20代・主婦、回答時期:2024年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:S.Takechi
調剤薬局に10年以上勤務。また小売業での接客職も経験。それらを通じて、多くの人の喜怒哀楽に触れ、そのコラム執筆からライター活動をスタート。現在は、様々な市井の人にインタビューし、情報を収集。リアルな実体験をもとにしたコラムを執筆中。