なんでもオープンに話す夫の義実家は、大の仲良し家族。ご機嫌で調子に乗った義父の一言をきっかけに、家族の食事が耐え難い空気に一変……。今回は、私の知人の美佐江さん(仮名)の義実家で起きたエピソードをご紹介します。

憧れの仲良し家族

私の夫の実家は、とても仲の良い家族です。親子でも隠し事をせず、何でもオープンに話します。結婚当初は少し驚きましたが、すぐにその風通しの良さが心地よくなり、私はこの家族が大好きになりました。

会計士事務所を営む社交的な義父は、まさに「ナイスミドル」という言葉がぴったりのイケオジ。それを支える専業主婦の義母は、時にやんちゃな義父を巧みに導く良妻賢母であり、一家の柱のような存在でした。

明るく楽しい義実家は、私にとって「いつか自分もこんな家庭を築きたい」と願う、理想の家族だったのです。

​バレンタインの夜、家族で外食へ

ある年のバレンタインのこと、私たち夫婦はチョコレートを届けるため義実家を訪れました。義父は、取引先の女性たちから高級チョコを山ほどいただいていましたが、私たちのチョコも「これは特別に嬉しいな」と満面の笑みで喜んでくれたのです。

「今夜はみんなでおいしいものを食べに行こう!」ご機嫌な義父の提案で、義兄の運転する車に乗り込み、家族みんなでレストランに向かうことに。いつにもまして饒舌な義父が話題を振りまき、車内は和気あいあいとした空気に包まれていました。

車内を凍り付かせた、軽率な「同調」

通り沿いに建つ、ひときわ派手で異彩を放つラブホテルの前を通った時、義兄が「このホテル、見かけは凄いけど、中は案外普通なんだよな」と言いました。

すると、「そうなんだよ、俺もがっかりしたよ」 義父がすかさず、調子よく同調したのです。一瞬間が空いた後、隣に座っていた義母が「なんで、あなたが知っているのよ」と、一言。車内は文字通り凍りつきました。

義父は「あ、いや、まあ昔のことだな……」と、明らかに動揺した様子で答えるのが精一杯。義兄は前を向いて運転に集中するふりをし、夫は気まずそうに窓の外を見つめたまま固まっています。私もただ息を潜めるしかありませんでした。

仲良し家族の盲点

レストランに到着してからも、義母は無言のまま。義父は小さく縮こまり、重苦しい沈黙の中で食事が終わりました。美味しいはずの料理も味が全くわからないほど。

私たち夫婦は、逃げるようにそのまま自宅に戻りましたが、その夜、義実家でどのような会話が繰り広げられたか想像に難くありません。当然ながら、義父は相当お灸をすえられたらしく、しばらく義母に頭が上がらなかったそうです。

何でも話すというのは、嘘がなくて良いかもしれません。しかし、それは悪いことをしていないことが前提。「正直すぎることの危うさ」を知った、忘れられないバレンタインの思い出となりました。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年2月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Sachiko.G 
コールセンターやホテル、秘書、専門学校講師を歴任。いずれも多くの人と関わる仕事で、その際に出会った人や出来事を起点にライター活動をスタート。現在は働く人へのリサーチをメインフィールドに、働き方に関するコラムを執筆。