あなたの子どもは、お薬が好きですか? 調剤薬局で働くSさん(50代女性)は新人時代、筋金入りのお薬嫌いな子どもに出会ったことがあるそうです。そんな子どもが喜んでお薬を飲んだ、ある方法とは……?

お薬嫌いの男の子

まことくんという、5歳の男の子の服薬指導(薬剤師が患者さんに、薬を安全に正しく使うための説明をすること)が回ってきました。処方せんには病院から「お薬はその場ですぐ内服」という内容のメモ書きがありました。

しかし、お薬嫌いのまことくんは断固拒否! 彼のお母さんは普段からお薬を飲ませるのに苦労しているらしく、お菓子やシールのご褒美も効果がありませんでした。

どうしても飲めない

あの手この手を尽くしながら15分が経過。お母さんは苛立ち、まことくんは涙目に。私も立ち尽くすことしかできませんでした。

そんな時、先輩薬剤師の本田さん(仮名・40代男性)が近づいてきました。何やらまことくんのお母さんとコソコソ話をしたのち、本人に話しかけます。

おやつで空気をゆるめる

「『お薬飲め飲め』って、疲れちゃったよね。おやつの時間にしない? ママにチョコアイス買ってきてもらおうか」こくん、と頷くまことくん。本田さんは、買ってきてもらったカチコチのチョコアイスを受け取ると、レンジで10秒ほどあたために休憩室へと入っていきました。

戻ってきた本田さんから受け取ったアイスを、おいしそうに食べるまことくん。ペロリと完食し終えた彼に、本田さんはこう言いました。「はい、おくすり飲めたね。おつかれさま!」

アイスを食べただけなのに

その言葉に、まことくんはキョトン顔。実は、チョコアイスの中にお薬を混ぜ込んでいたのです。まことくんのお薬が、チョコアイスに混ぜても問題がないお薬だったからこそできた方法でした。事前のコソコソ話で、アレルギーの有無と、アイスを食べさせてもいいかを確認していたそうです。

一部始終を見守っていた他の患者さんからも、まことくんに拍手が送られ、店内はお祝いムードになりました。

知識は使ってナンボ

薬剤師として、子どもが飲まない時の対策法は学んでいます。けれど、知識は使ってこそ意味があると痛感しました。

あの時の本田さんのように機転を利かして、自分の持つ知識で患者さんの助けになりたい。そう思いながら、今日も仕事に励んでいます。

【体験者:50代・女性会社員、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:S.Takechi
調剤薬局に10年以上勤務。また小売業での接客職も経験。それらを通じて、多くの人の喜怒哀楽に触れ、そのコラム執筆からライター活動をスタート。現在は、様々な市井の人にインタビューし、情報を収集。リアルな実体験をもとにしたコラムを執筆中。