新生活への期待と、予想外の大荷物
私達夫婦が新居として選んだのは2DKのマンションでした。決して広くはないスペースのため、私は持ち物を断捨離し、必要なものだけを厳選して持ってきました。
一方、夫・裕介(仮名)はというと……引越し当日に届いたのは、ダンボール20箱以上の大荷物。物を捨てられない性格と本人からも聞いていましたが、その量は私の想像をはるかに超えていました。
「これ、どこにしまうつもり?」と尋ねると、裕介は「その辺に適当に置いておいて」と答えるばかりで片付けるつもりもなさそうです。新居にダンボールが積み重なっているのは嫌だったので、夫に断って荷物の整理を始めました。
思い出と現実の狭間
中に入っていたのは、生まれた時からの膨大なアルバム、漫画の全巻セット、録り溜めたDVD。さらに幼稚園のスモックやランドセル、卒業文集まで……。まさに裕介の人生がそのままそこにあるようでした。そして最後に大きな箱から巨大な「目」が出てきたときは、思わず「ギャッ」と叫んでしまいました。それは鯉のぼりの「目」でした。
裕介に尋ねると、父親がなんでも大きいものが好きで、実家の庭には巨大な鯉のぼりが泳いでいたそうです。この先、私たちがこんな大きな鯉のぼりを立てられる家に住めるとは到底思えず、「ずっとこの鯉のぼりを置いておくの?」 と夫に聞いても、「そのうち処分するから、とりあえず取っといてよ」と取り付く島もありません。
まさに、「思い出」を大切にするか、「今現在」を快適に暮らすかのせめぎ合い。結局、収納スペースはすべて裕介の荷物に占領され、入りきらない物のために新しい収納棚を買い足す羽目になりました。
義母の一言
そんなある日、義両親が新居に遊びに来ました。初めて部屋を見渡した義母が真っ先に口にしたのはこんな言葉でした。「あら、ずいぶん物が多いわね。もう少しスッキリさせたら?」
無邪気な一言に、私は思わず心の中で叫びました。「その原因を作ったのは、あなたの息子さんです!」 私は、「少しずつ整理していきます」 と笑顔で答えました。
義母の言葉が、思わぬ突破口に
義両親が帰宅した後、私は裕介に優しく声をかけました。 「お義母様に言われちゃったね。やっぱり物が多すぎるんだと思うの。少しスッキリさせようよ」私の言葉には耳を貸さなかった裕介も、母親からの指摘には抗えないようで、ようやく重い腰を上げました。
膨大な写真は厳選してアルバム数冊分に絞り、残りはデータ化。思い出の品々は、取っておくもの、売るもの、捨てるものに分別。そしてあの巨大な鯉のぼりは裕介の親戚に差し上げることに。
部屋が徐々に片付いていく様子に、裕介の断捨離にも拍車がかかり、家の中はすっきり片付きました。私は義母に感謝しつつ、ようやくホッと息をつくことができたのです。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Sachiko.G
コールセンターやホテル、秘書、専門学校講師を歴任。いずれも多くの人と関わる仕事で、その際に出会った人や出来事を起点にライター活動をスタート。現在は働く人へのリサーチをメインフィールドに、働き方に関するコラムを執筆。