慣れない育児と、余裕をなくしていた日々
私は出産したばかりで、第一子の育児に追われる毎日を過ごしていました。初めてのことばかりで思うようにいかないことも多く、慢性的な睡眠不足も重なって、心にも体にも余裕がありませんでした。
息子はよく泣く子で、抱っこしても、あやしても、何をしても泣き止まないことがあります。そのたびに(なんで泣き止まないんだろう。私のやり方が悪いのかな……)と考えるようになり、少しずつ自信をなくしていきました。
比べられるたびに残るモヤモヤ
そんな中、夫が抱っこするとすっと泣き止むことがありました。すると夫は、「俺が抱っこすると泣き止むね」「彩より俺の方が、あやすの上手いんじゃない?」と、どこか得意げに話します。
夫は育児に協力的で、悪気がないことも分かっていました。だからこそ、その場で言い返すことができず、笑って受け流すしかありませんでした。でも心の中には、うまく言葉にできないモヤモヤが残り続けていました。
義母のひとことで変わった空気
ある日、夫と息子と一緒に義実家を訪問したときのことです。その日も息子はぐずっていて、義母が抱っこすると、不思議とすぐに泣き止みました。それを見た夫が、何気ない口調で言いました。「さすが母さん。経験が違うよね。彩が抱っこしても泣き止まないこと多くて」
すると義母は、間髪入れずにこう言いました。「何言ってんの! 一番一緒にいるママだから安心して甘え泣きするのよ」「あんたも赤ちゃんの頃、私の前では一番泣いてたわよ!」義母は笑いながらそう言って、その場の空気を軽くしてくれたのです。
“泣かれる理由”が母としての自信に
義母の言葉を聞いて、夫は「そういうものなのか……」と、少し驚いた様子でした。それ以来、「俺の方が上手い」といった言葉を口にすることは自然となくなりました。
私自身も、義母の言葉が心に残っています。泣かれるたびに感じていた「ダメな母なんじゃないか」「子育てに向いていないのかも」という気持ちが、少しずつほどけていきました。
“泣かれる=ダメな母”ではなく、“いちばん安心できる存在だからこそ泣ける”と思えるようになったことで、張りつめていた気持ちが和らぎ、心が軽くなった出来事でした。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。