職場では、はっきり言えない違和感ほど心に残るものですよね。毎日隣で続く、ある同僚の“癖”。気になるのに指摘できずにいた私の前で、思いがけずその話題が本人の口から出てきました。誰も悪者じゃないからこそ、余計にモヤッとした出来事です。

気になって仕方がない、隣の席の“癖”

私の会社で、隣の席に20代後半の女性社員が座っています。仕事ぶりに大きな問題はなく、会話も普通にできる同僚です。ただ一つだけ、ずっと気になっていることがありました。

彼女はデスクに座っている間、ほぼ常に貧乏ゆすりをしているのです。日によっては正直、まあまあ激しめで、机や床がわずかに揺れることもありました。音はしないのですが、視界の端で脚が揺れ続けるため、集中力がじわじわ削られていく感覚がありました。

注意するほどのことでもないし、指摘したら神経質だと思われそうで、何も言えずにいました。「気にしすぎなのは私のほうかもしれない」そう思いながら、毎日やり過ごしていました。

本人から聞かれるなんて、思ってもみなかった

そんなある日、彼女から突然こう聞かれました。「私の貧乏ゆすり、気になります?」まさか本人からその話題を振られるとは思っておらず、一瞬言葉に詰まりました。「え? ええ……まあ……そんな時もありますけど……」自分でも分かるほど、歯切れの悪い返事になってしまいました。

すると彼女は少し間を置いて、「実は……」と話し始めました。会社から、貧乏ゆすりについて指摘を受けたこと。周囲から“気になる”という声があると伝えられたこと。自分でも気にはしているけれど、仕事中に緊張すると無意識に出てしまうこと。止めようとすると、逆に集中できなくなることもある、ということでした。

話を聞きながら、「そういう事情があったんですね」と思いました。同時に、それでも“気になるものは気になる”という正直な気持ちも、心の中に残っていました。

私だけじゃなかったと知って、さらに複雑に

彼女の右側が私で、左側には派遣の女性が座っています。後日、その派遣の女性と話す機会があり、「実は私もかなり気になっていました」と打ち明けられました。その女性は、あまりにも気になってしまい、派遣会社に相談したそうです。

そこから会社に話が上がり、席替えなどの対応は難しいため、本人に伝える形になったと知りました。誰かが悪いわけではありません。でも、誰かが“気にし続けていた”のも事実でした。

モヤモヤは残る。でも、少しだけ見え方が変わった

それから彼女は、以前より貧乏ゆすりをしないよう意識している様子でした。ときどき無意識に脚が動きそうになると、ピタッと止めます。そして、はっとしたようにこちらを見て、「すみません」と言うことがあります。その様子が、正直少し面白くて、思わず笑ってしまいそうになることもありました。

モヤモヤした気持ちが完全に消えたわけではありません。それでも、「みんな、それぞれ事情を抱えながら頑張っているんですね」と思えるようにはなりました。誰も悪者じゃないまま終わる、なんとも言えない、でも現実的な職場の出来事でした。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。