はじめてのお泊り
私には4歳の息子がいます。幼稚園の夏休みを利用して、息子は義母(70代)の家にお泊りすることになりました。親の同行なしの、初めての単身お泊り。ちょっとした旅行気分で目を輝かせる息子を、私は微笑ましく見送りました。
息子は寝る時、必ず私か夫の添い寝が必要でした。そんな子どもの成長が喜ばしく、そしてちょっぴり寂しい。遠ざかる息子の背中を見つめながら、そんなことを感じていました。
無事に終わるはずだったお泊り
それから2日後、お泊りイベントを終えて帰宅した息子。義母に重ね重ねお礼を伝え、これにて終了。……かと思いきや、息子にはどうしても見過ごせない「ある変化」が起こっていたのです。
息子に起きた変化
変化に気づいたのは、お絵描きで遊んでいた時のことでした。息子は左利きのはずなのに、なぜか右手を使っていたのです。慣れない手つきで、必死にクレヨンを握って絵を描く息子。「あれ? 左のおててで書かないの?」と聞くと、くもりなき眼差しでこう答えました。
「ばあばがね、『ほんとは、みぎでかくのが、ただしいんだよ』って、おしえてくれたの。ばあばのいえで、たくさんれんしゅうしてきたよ」おそらく義母は、左利きは矯正するものとされていた時代を経験した人なのでしょう。しかし、利き手を無理やり変更させることは、夫も私も望んでいません。
よかれと思ってしてくれた行動だからこそ、よけいに私は困惑してしまいました……。義母を悪者にしないように、必死に言葉を選んで息子には「左手のままでいいんだよ」と、説得しました。
伝え方に悩む現在
それから数か月経った現在、実はまだ、義母にこの一件を伝えられていません。迫りくる冬休み、息子は再びお泊りに行く予定です。
正直、次に会う時のことを考えるとどうしても気が重い。価値観のズレに向き合う時の、角が立たない言い回しを必死に探す毎日です……。
【体験者:40代・主婦、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:S.Takechi
調剤薬局に10年以上勤務。また小売業での接客職も経験。それらを通じて、多くの人の喜怒哀楽に触れ、そのコラム執筆からライター活動をスタート。現在は、様々な市井の人にインタビューし、情報を収集。リアルな実体験をもとにしたコラムを執筆中。