働く上で、絶対に譲れない条件は人それぞれ。入社前にきちんと確認しておかないと「想像と違った」と後悔するかもしれません。私の同僚が実際に体験した、中途入社にまつわるエピソードを紹介します。

人手不足の店舗に朗報

私は調剤薬局で事務の仕事をしています。人手は常に不足気味。毎日ギリギリの人数で仕事を回しています。そんなうちの薬局に、正社員の事務が加わることになりました。筆記試験と複数回の面接を経て採用された、待望の新人です。人手不足の解消にスタッフみんなで喜びました。

期待の新人

新人さんは、入社前に手土産を持って挨拶に来てくれました。人懐っこい笑顔が印象的な、彼女の名前は須藤さん(仮名・20代女性)。調剤薬局は未経験だそうですが、雑談を交わすうちに「彼女とはうまくやっていけそうだな」と安心しました。

突然の退職宣言

須藤さんが勤務し始めて3日目のことでした。朝イチに電話をかけてきた彼女が口にしたのは「やっぱり働くの辞めます」の一言のみ。動揺する私たちをよそに、彼女はその日、仕事場にはやって来ませんでした。

何度か電話をかけるも、最初のほうは応答ナシ。やっとの思いで電話が繋がり、退職理由を聞いてみると「思っていたのと違ったんで」と、何とも歯切れの悪い言葉しか返ってきません。

私は、「具体的にどんなところが違ったのか、正直に教えてほしい」と伝えました。すると、彼女の退職理由は思いがけないものだったのです。

入社前に分かっていたら

須藤さんの退職理由、それは“映えるネイルアートができない”ことでした。ネイルに関する規定は会社によっても異なりますが、うちでは基本的に禁止です。事務もお薬を扱う場面が多く、異物混入の恐れがあるためです。

確かに、ネイルアートを楽しみたい人に、うちの薬局で働くのはオススメできません。納得しつつも「それなら入社前に確認してくれたら……!」と心の中では本音が抑えきれませんでした。この出来事の2日後、須藤さんは正式に退職となりました。

一瞬で終わった縁

採用にかけた労力や、人手不足解消への期待感。そういうものがガラガラと崩れ落ちたような気がします。それでも、決断が早かったのはお互いにとってよかったのでしょう。そう思うことにして、新たな仲間の登場を待っています。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2025年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:S.Takechi
調剤薬局に10年以上勤務。また小売業での接客職も経験。それらを通じて、多くの人の喜怒哀楽に触れ、そのコラム執筆からライター活動をスタート。現在は、様々な市井の人にインタビューし、情報を収集。リアルな実体験をもとにしたコラムを執筆中。