ベテラン社員のアドバイス
私が勤めていた旅行会社では、毎年、専門学校の短期留学を受注しており、12月半ばの2週間、ドイツとオランダへの添乗の仕事がありました。
入社2年目の年、私は初めてその添乗に出ることに。ペアを組むのは、5年連続で担当しているべテランの河野さん(仮名)。河野さんは事前の打ち合わせで、服装についてアドバイスをくれました。
「とにかく寒いから防寒第一」「田舎町だから、おしゃれなんかしていると浮くわよ」「地味で動きやすい服装が一番」私はその言葉を信じ、分厚いダウンコートをはじめ、見た目よりも防寒重視で服を選び出発したのです。
集合場所で見た光景
ところが、出発当日、空港で河野さんの姿を見た瞬間、自分の目を疑いました。白いコートに白いパンツ。全身白コーデの装いは、学生を引率する添乗員というより優雅な旅行に出かけるセレブのよう。
現地に着いてからも、河野さんは毎日のように服装を替え、洋服に合わせてベルトや靴まで完璧にコーディネート。事前に聞いていた話とのギャップに、私はただただ唖然とするばかりでした。
大雨の中のアクシデント
旅行が中盤に差しかかったある日、トラブルが発生。移動中のバスが突然故障し、走行不能になってしまったのです。
ホテルまではあとわずか。すぐに代車の手配が難しく、大雨の中、20分ほど歩くことに……。道路はぬかるんだ田舎道、車が通るたびに、水しぶきが激しく跳ね上がります。ホテルに着いた河野さんは、泥だらけになった白いコートを見つめ、言葉を失っていました。
後輩へのアドバイス
その夜、河野さんは夜遅くまでコートの汚れを落としていたそうです。それでも、完全にはきれいにならず、残り1週間、うっすら汚れたコートを着ていた彼女は、本当に気の毒でした。
翌年、河野さんに代わり、私が後輩とペアで添乗することになり、私は後輩にこう伝えました。「添乗では、アクシデントがつきもの。防寒だけでなく、動きやすく汚れても気にならない服装第一で」
【体験者:60代・女性会社員、回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Sachiko.G
コールセンターやホテル、秘書、専門学校講師を歴任。いずれも多くの人と関わる仕事で、その際に出会った人や出来事を起点にライター活動をスタート。現在は働く人へのリサーチをメインフィールドに、働き方に関するコラムを執筆。