料理を褒めてくれる夫
夫は、私が料理を出すたびに「本当に美味しい」「ありがとう」と言ってくれます。仕事から帰ってきて、食卓を見ると少し表情が和らぐのも分かり、食事の時間を楽しみにしてくれているのが伝わってきました。そんな様子を見るのは、作る側として素直に嬉しいものでした。
ただ、夫はとにかく食べるペースが早い人です。大皿に盛ったおかずも、私がまだほとんど手をつけないうちに、いつの間にかきれいになくなってしまうことが何度もありました。
少しずつ溜まる違和感
「私もまだ食べてるんだから、少し考えてよ」と言ったこともあります。そのたびに夫は、「だって美味しいんだもん」と悪気のない様子で笑って返してきました。
作った料理を褒めてくれるのは本当にありがたいし、美味しく食べてくれることに感謝もしています。それでも、食事のたびにどこか落ち着かない気持ちが残りました。(一緒に食べているはずなのに、同じ時間を過ごしている感じがしない……)と、心の中でモヤモヤが募っていったのです。
夫が気づいた食卓の変化
ある日から、私は大皿盛りをやめて、最初から一人分ずつ盛り付けるようにしました。そうした方が、途中でおかずの残りを気にしなくて済み、お互いに楽だと思ったのです。夫の帰宅が遅い日は、先に自分の食事を済ませることもありました。
そんな日が続いていると、夫が「最近、一緒に食べてないね。なんか前と違う気がする」と、不思議そうに言いました。違和感はありつつも、それがなぜなのかまではわかっていないようです。
私は「一緒に食べてるつもりでも、私のペースを考えてもらえなくて、いつも途中で置いていかれてる気分だった」と、正直な気持ちを話しました。
同じ時間を共有する心地よさ
夫は少し黙ってから、「美味しいって、たくさん食べるのが一番伝わると思ってた」「一緒に食べれない寂しさを感じて、やっと分かった」と話してくれました。
それからは、おかずの配分や食べるペースを自然と気にしてくれるようになり、また一緒に食べる食卓に戻りました。同じものを、同じ時間に食べて、同じ空気を共有する。それが、私にとっていちばん落ち着く、夫婦の食卓なんだと感じています。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。