子育て中の親にとって、子どもの急な体調変化ほど心細いものはありません。それが夜だったとしたら、不安は一気に膨らみます。今回は、何気ない夕食の時間に起きた、私と姉が肝を冷やした出来事をご紹介します。

ワンオペ育児の姉との夕食

私の2歳年上の姉は結婚5年目。夫は毎日帰りが遅く、3歳になる息子・海君(仮名)を、ほぼワンオペで育てていました。私は、ストレスが溜まりがちな姉の話し相手になるため、時々姉の家を訪ねていたのです。

その日、姉は夕食に、手早く用意できる天ぷらとざるうどんを用意してくれました。まず海君に少量を食べさせ、そのあと私たちもゆっくり話をしながら食事しようとしていた矢先のこと……。

突然の異変

海君の様子が急におかしくなったのです。みるみる顔が真っ赤になり、息遣いも荒くなっていきます。目は虚ろで、つい先ほどまで元気にしていたのが嘘のようでした。

まるでお酒に酔っているようでしたが、食べたのはうどんだけ……。今まで小麦粉でアレルギーが起きたこともなく、姉はただオロオロするばかり。普通でないことだけは、誰の目にも明らかでした。

夜間救急で待つ不安

とにかく病院へ相談しようと、近くの大学病院の夜間救急に電話を入れ、状況を説明すると、「心配でしたら、すぐに連れてきて」とのこと。急いで、海君を抱き、念のため食べさせたうどんの袋を持って、タクシーで病院に向かいました。

移動中も、海君はぐったりしたまま。病院に着くとすぐにストレッチャーに乗せられ、診察室の奥へ運ばれていきました。残された姉と私は、待合室で待つことに。姉の顔は蒼白で、このまま姉のほうが倒れてしまうのではないかと心配になるほどでした。

まさかの診断結果

ようやく診察室に呼ばれると、海君は診察台の上で、まだ赤みを残した顔のまま眠っていました。医師の口から出たのは、「心配いりませんよ」という言葉でした。渡していた袋を見ながら、医師は笑みを浮かべてこう続けたのです。

「うどんに含まれていた『酒精』で、酔っぱらってしまったようですね。普通は茹でるとアルコール分は飛ぶのですが、海君はもしかすると、お酒にとっても弱い体質なのかもしれませんね」思いがけない説明と、このまま連れて帰って問題ないと聞き、私たちの緊張は一気にほぐれました。

この出来事以来、姉は何を買うにもパッケージの成分表示を確認するようになったそうです。子育てには、思いもよらないリスクが潜んでいるのだと、つくづくその大変さを実感した夜でした。

【体験者:60代・女性会社員、回答時期:2025年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Sachiko.G 
コールセンターやホテル、秘書、専門学校講師を歴任。いずれも多くの人と関わる仕事で、その際に出会った人や出来事を起点にライター活動をスタート。現在は働く人へのリサーチをメインフィールドに、働き方に関するコラムを執筆。