ブレない夫の食のこだわり
夫の食の好みはとにかく一貫しています。白米は固く、パスタはアルデンテ、味付けは基本濃いめで、鍋ならキムチ鍋一択。こだわりが強いのは長所でもありますが、ほかの家族の事情はあまり考慮されません。
二人きりの頃は、私が合わせていれば平和でした。大人同士なので譲り合いもできていましたが、子どもが生まれてから状況は一変してしまいます。
子ども基準への切り替え
大人に合わせて固めに炊いたお米は、子どもにとってただの“拒否案件”。「やだ!」の一言で、まったく手を付けなくなってしまいます。そこで私は、自然と子ども基準でお米をやわらかめに炊くようになりました。
すると夫から、「俺の実家のお米の固さわかる? あれが一番うまいんだよ」と謎のアドバイスが飛んできます。小さい子どもがいる生活と、大人だけの実家の食卓はそもそも土俵が違うのに、比較する意味がわからず困惑していました。
譲らない“ベスト固さ”
こちらは家族全体に合わせて調整しているのに、夫だけは自分の“ベスト固さ”を死守。子どもに合わせた食事が続くと、どこか不満そうな空気を出していました。
そんなある日、夫が自分で炊いたご飯を、意気揚々と子どもたちに出します。すると子どもたちは口をそろえて、「なんか固い……ママのご飯のほうがやわらかくておいしい!」と、あまりにも素直な感想を連発しました。
家族仕様という気づき
その一言は、夫にとってかなり効いたようです。「子ども基準」の重要性をリアルに理解した瞬間だったのだと思います。
それ以来、夫は食卓の“家族仕様”を意識して、少しずつ合わせてくれるようになりました。固めお米への信仰もほんのり角が取れ、その変化が素直にありがたいです。
子どものいない日のランチだけは、日頃の感謝を込めて、パスタをカッチカチのアルデンテにしています。お互いの好みを尊重する余裕が、ようやく出てきたのです。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2020年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。