これは筆者の友人から聞いたエピソードです。「今日は何を着ようかな〜」なんてウキウキと身支度をしていたある日。鏡の前で洋服をあわせていると、だれかが通り過ぎたような気がしました。友人がリビングを覗くと、そこにはまさかの光景が……。

お出かけ準備中

お昼前、お出かけの準備をしていて、自分の部屋の姿見の前で洋服を選んでいました。いつも通り「どれを着ようかな~」なんて考えながら鏡に向かっていたときです。

お父さん?

鏡の端に、黒いスーツを着た男性がサッと廊下を横切る姿が一瞬だけ映りました。「え? お父さん? こんな昼間に帰ってきたの?」そう思ってリビングに向かったのですが、家の中には私しかいません。

「え? たしかに廊下を横切ったよね……?」見間違い……と言ってしまえばそれまでですが、鏡越しとはいえ、あまりにも鮮明に見えたのです。

「いや、見間違えるわけない」その瞬間、背中をぞわっと冷たいものが走って、「やだ、何これ……」と鼓動が早くなっていくのがわかりました。

ただの笑い話に

さっそく家族にも、“黒いスーツの男性”の話をしてみました。でも返ってきたのは「え〜なにその話〜?」「見間違いでしょ〜」「怖いからやめて〜」と軽く笑われるだけ。誰も真剣に取り合ってくれません。

それからというもの、ハッキリと姿を見ることはありませんでした。でも、一瞬だけ空気が切り替わるような違和感や、視線の端に気配が走る感じがときどき廊下でするようになったのです。

子犬と私だけが感じるもの

そんなある日、我が家に子犬を迎えました。数ヶ月が経った頃、その子が突然、廊下に向かって「ううぅー……」と低く唸りはじめたのです。それはまるで、何か“見えているもの”に向かって威嚇しているように。同時に、私自身も「あ、またあの違和感だ」と気づきました。まるで、私と犬にだけ伝わる“何か”がそこにあるみたいです。

結局、引っ越してしまったので真相はわかりません。でも、今でもふと思うのです――もしかして、あの廊下って“幽霊の通り道”になっていたのかな、なんて。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2024年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:島田歩実
元銀行員として、女性のキャリアやお金にまつわるあれこれを執筆中。アメリカへの留学経験もあり、そこで日本社会を外から観察できたこともライターとしての糧となる。現在はSNSなどを介してユーザーと繋がり、現代女性の声を収集中。