シフト作成者の「致命的な問題」
当時、宿泊部は約20名体制で交替勤務を回していました。生活リズムを整えるだけでも難しい環境です。夜勤を除いても早番、中番、遅番のシフトがあり、公平なシフトのために、「希望休みは〇日まで、希望シフトは〇日まで」といった厳格なルールがありました。
シフト作成を一任されていたのは、チーフ社員の片岡さん(仮名)。仕事はできるものの、彼には致命的な問題がありました。それは「若くて可愛い女性にめっぽう甘い」こと。「片岡さ〜ん、この日は早番にして♡」上目遣いで頼まれるだけで表情が緩み、「仕方ないなぁ、今回だけだよ」とすぐに特例を認めてしまうのです。
問題は、「今回だけ」が毎度繰り返されることと、そのしわ寄せが真面目な古参スタッフや、片岡さんのお気に入りではない社員に回ってくることでした。
シフト担当者からのお願い
そんなある日、事件が起きました。片岡さんが、若手の女性社員・A子さんに声をかけたのです。「悪いんだけど、この日の早番、遅番に変わってもらえないかな?」A子さんはその夜、友人との約束があり一瞬迷いましたが、シフト担当者の頼みとあっては断れません。
「……わかりました。調整します」彼女は泣く泣くシフト変更を受け入れました。真面目を絵にかいたようなA子さんは、「業務のためなら仕方がない」そう考えたのでした。
判明した衝撃の理由
しかし後日、耳を疑うような事実が発覚。実はA子さんが遅番に変わった夜、片岡さん主催の飲み会が開催されていたことがわかりました。さらに、自分のお気に入りの女子社員B子さんを参加させるために、B子さんの遅番とA子さんの早番を交換させたことも明らかに……。
まさに私利私欲のための職権乱用。事実を知ったA子さんは怒り心頭。仕事の穴埋めならまだしも、上司の「下心」の踏み台にされ、大事な約束を潰されたのですから。A子さんは、すぐさまマネージャーのもとへ向かい、全ての経緯を報告したのです。
権力を剥奪された男の末路
結果は迅速かつ妥当なものでした。片岡さんは即座に上司に呼び出され、厳重注意を受けました。「私情でシフトを操作し、スタッフに犠牲を強いる人間にシフトを任せるわけにはいかない」彼はシフト作成の担当から外され、チーフ職も解かれることに。
新しい担当者のもとでは公平なシフトが戻り、職場の雰囲気も良くなりました。片岡さんはというと、以前のように「片岡さ~ん♡」と甘い声で呼びかけられることもなくなり、すっかり影が薄い存在になってしまいました。
【体験者:60代・女性会社員、回答時期:2025年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Sachiko.G
コールセンターやホテル、秘書、専門学校講師を歴任。いずれも多くの人と関わる仕事で、その際に出会った人や出来事を起点にライター活動をスタート。現在は働く人へのリサーチをメインフィールドに、働き方に関するコラムを執筆。