仕事とは、それぞれの職務を全うし、さまざまな人の力が合わさって成り立つもの。けれど、自分の立ち位置を見誤ると周囲との関係を崩してしまうかもしれません。今回は、業務内容にまつわる友人の体験談を紹介します。

派遣としての業務内容

以前、家電量販店で派遣スタッフとして働き始めたときのことです。「メーカー派遣の販売応援」という立場のため、主な仕事は担当部門の接客 & 商品説明。レジ対応は量販店の社員に引き継ぐよう研修で教わっていました。

研修内容との違い

しかし、購入を決めたお客様をレジ前までお連れして離れようとすると、先輩派遣スタッフの山口さん(仮名)から注意を受けました。「ポイントカードの受け取りとか、袋詰め作業くらいはできるでしょ? そんなことも気付かないの?」

その言葉に驚きました。レジ内に入ることは、事前の研修でNGと聞いていたからです。経験も浅かった私は「現場は違うのかな」とモヤモヤしながら、自分の至らなさを反省しました。

私、なんでもします

そこで、山口さんの仕事ぶりを観察して勉強することに。すると、「あること」に気付きました。

彼女はレジの操作やカードの入会手続きといった、派遣の業務外のことにまで手を出していたのです。「これは社員の仕事なので、いいですよ」と店舗スタッフがやんわり断っても「大丈夫です! 私もやったほうが効率いいですよね!」と強引に押し切っていました。その言葉に、スタッフの顔は曇ります。

山下さんの仕事ぶりは、どこか空回りしているような違和感がありました……。

いつも顔を合わせていたのに

ある日出勤すると、そこに山口さんの姿はありませんでした。表向きは契約満了ですが、本当の理由は別にあったようです。仲良くなった量販店の社員がこっそり教えてくれました。「契約延長にならなかったのは、派遣がやらなくてもいい業務を伝えても、やめてくれなかったからなんだよね」

山口さんの働きぶりは、いつの間にか本来の業務範囲を超えていたようでした。求められてないことまで踏み込んでしまうのは、ただの「おせっかい」になりかねません。

それぞれに役割がある

私はこの経験から、業務に入る前に「ここで求められている役割は何か」を意識するようになりました。まずは求められている役割をしっかり果たす。その大切さを、今も心にとどめています。

【体験者:30代・派遣社員、回答時期:2023年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:S.Takechi
調剤薬局に10年以上勤務。また小売業での接客職も経験。それらを通じて、多くの人の喜怒哀楽に触れ、そのコラム執筆からライター活動をスタート。現在は、様々な市井の人にインタビューし、情報を収集。リアルな実体験をもとにしたコラムを執筆中。