私の知人・美和(仮名)には、どうしても許せない夫の悪癖がありました。 何度注意しても直そうとしない夫に、彼女が考えた「とっておきの作戦」とは――。 デリカシーのない夫の悪癖を見事に封印したエピソードを紹介します。

仲良し夫婦のどうしても許せない悪癖

私と夫は結婚5年目。まだ子どもはおらず、恋人同士の延長のような穏やかな生活を楽しんでいました。周囲からも「仲良し夫婦」と言われることが多く、私自身も幸せを感じていました。

しかし、夫にはどうしても受け入れられない「悪癖」がありました。私が夫に友人を紹介すると、決まってこんな質問をするのです。「今までに美和に一番ムカついたことって何?」

当然、友人は戸惑いますが、夫が「ひとつくらいあるでしょ」と食い下がるため、渋々口を開きます。「……待ち合わせに遅れた時の言い訳が長いところ、かな」

たとえ小さなことでも、友人の口から出る「本音」は、私の胸にグサリと刺さります。それを夫は「わかる!」と楽しげに聞いているのです。

何度抗議しても変わらない夫

「あんな質問しないでよ。傷つくから」私は何度も夫に抗議しました。しかし返ってくる言葉はいつも同じ。「余興だよ。それに、たまに本音で話す良い機会になったでしょ」

反省の気配は全くありません。夫は「悪いことをしている」という自覚がないどころか、「友人関係が深まるきっかけになる」と本気で思っている様子。全く悪意がないために、余計に厄介でした。

溺愛する妹への質問

ある日、夫の実家で家族と食事をする機会がありました。そこには、健が溺愛する12歳下の妹も同席していました。早くに父親を亡くした夫にとって、彼女は妹であり、娘のような存在でもあります。

食事の最中、義妹に尋ねてみました。「ねぇ、『お兄ちゃんのここだけは勘弁してほしい』っていうところ、ある?」その瞬間、夫の顔色が変わり、「おい、なんでそんなこと聞くんだよ」

私が構わず続けると、妹はあっけらかんと答えたのです。「あー、あるある! 一番イヤなのは、話してると何でも“説教モード”になるところ。ほんと勘弁してほしい時あるんだよね。あと、いい大人なのに門限、門限って父親みたいにうるさいところ!」

最愛の妹からの「勘弁してほしい」の直球に、夫は箸を持ったまま黙り込み、動揺を隠しきれない様子でした。

踏み込んではいけない領域

食事を終えて帰る途中、不機嫌な夫が口を開きました。「あんなこと、わざわざ聞くなよな」私はすかさず、「いつもあなたが私の友達に聞いてたことでしょ。本当に嫌な気持ちになるってことに、どうしても気づいてほしかったの。嫌なことを聞かせてごめんね」夫は何も反論しませんでした。

それ以来、夫は「あの質問」を二度としなくなりました。夫の想像以上に落ち込む姿に、少し可哀そうになりながらも、夫婦の間でも踏み込んではいけない領域があることを、互いに実感した出来事でした。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2020年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Sachiko.G 
コールセンターやホテル、秘書、専門学校講師を歴任。いずれも多くの人と関わる仕事で、その際に出会った人や出来事を起点にライター活動をスタート。現在は働く人へのリサーチをメインフィールドに、働き方に関するコラムを執筆。