深夜2時の電話
私はある夜、不思議な電話を受け取りました。「え? こんな時間に?」と時計を見ると、夜中の2時。胸の奥でザワっと嫌な予感がして、普段ならほとんど出ない家の電話に出てみることに。おそるおそる「もしもし……?」と声をかけました。
知らない年配男性からの「卵の配達」のお知らせ
「こんばんは、夜分遅くに失礼します。お待たせいたしました。準備が整いましたので、これから卵の配達に参ります」聞いたことのない、年配の男性の声。「卵の配達? そんなもの頼んでませんけど。あの……どちらさまですか?」問いかけ終わる前に、ブチッと電話は切れてしまいました。
「なにこの電話。怖い……」気味の悪さに、同居している90歳の母に相談しようと思いましたが、すでに母はスヤスヤと夢の中。「まぁ、明日話せばいいよね」と私も布団に潜り込みました。
翌日の朝
いつもの時間になっても母が起きてこないので声をかけることに。「お母さん、そろそろ起きない? お腹空かないの?」そう声をかけながら布団をめくった瞬間ーー。母は、冷たくなっていました。「お母さん? ……嘘でしょ? ねぇお母さん……!」叫んでも、ゆすっても、もう返事はありませんでした。
母の死を悲しむ暇もなく、事件性がないか調査が入りました。結果は老衰。死亡推定時刻は、電話が鳴った夜中の2時頃。
不思議な体験
別々に暮らす家族も集まり、涙とともに母の思い出話を語り合っていると、一人、またひとりと「実はね、あの時間に……ちょっと変な夢を見たんだよね」「私も。なんか呼ばれたような気がして目が覚めたの」なんと家族全員が母が亡くなった“夜中の2時”に不思議な経験をしていたのです。
「お母さんからのメッセージだったのかなぁ」誰かがそうつぶやき、私はふとあの電話を思い出しました。「準備が整いましたので、これから卵の配達に参ります」あの不可解な謎の言葉は一一もしかして「旅立ちの準備ができました」という、お知らせだったのかもしれません。真相はわからないままですが、今でもあの電話の声だけははっきり耳に残っています。
【体験者:60代・主婦、回答時期:2007年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:島田歩実
元銀行員として、女性のキャリアやお金にまつわるあれこれを執筆中。アメリカへの留学経験もあり、そこで日本社会を外から観察できたこともライターとしての糧となる。現在はSNSなどを介してユーザーと繋がり、現代女性の声を収集中。