サンタクロースを信じる娘
娘が小学4年生のときのクリスマスの話です。まだサンタさんを信じてはいるけど、周りの子がだんだん気づき始める年頃で、私たち夫婦も「そろそろ本当のことを言うべきかな」と悩んでいました。ただ、息子はまだ小さくて完全にサンタを信じていたので、「今年はまだ隠しておこう」ということになり、例年通り準備することにしました。
いつも通り、娘に欲しいものを聞こうと何気なく声をかけました。「サンタさんにお願いするプレゼント、今年は何がいいの?」
“聞きたい母”と“教えない娘”の攻防戦
娘の返答は予想外のものでした。「サンタさんって本当にいる? いるなら、お母さんに言わなくても分かるよね?」
え、そう来る? と内心焦りました。欲しいものを聞き出せなかったら、こちらも準備ができません。でも娘は完全に“確かめモード”に入っていて、絶対に言おうとしないのです。
埒が明かないので、息子に「お姉ちゃんに欲しいもの聞いてくれない?」とお願いしました。張り切って走って行きましたが、すぐ戻ってきて「教えてくれなかったよ〜!」と。完全に手詰まりで、このまま当日を迎えるしかない状況になりました。
娘の欲しかったものとは……?
夫と相談して仕方なく、「これなら喜んでくれるのでは?」というプレゼントを選んで購入。ドキドキしながら枕元に置きました。
翌朝、娘がプレゼントを見つけて喜んでいたので、とりあえず安心。「サンタさんは、欲しかったものくれた?」と聞いてみると娘はケロッとした顔で、「うん! ていうか今年、特に欲しいものなかったんだよね〜!」こっちは当日までずっと頭を抱えてたのに、その様子に力が抜けました。
真実を知り、まさかのリアクション
この一件で私は「来年はもう隠すのは難しいかも」と思い、覚悟を決めて娘に話しました。「実はね、サンタさんのプレゼントはお父さんとお母さんが用意してたんだよ」
娘は一瞬きょとんとしたあと、「やっぱりね! そうなんじゃないかなって思ってた!」と、あっけらかんと笑いました。
大騒ぎしたのは親ばかりで、当の本人は意外と冷静。なんだか拍子抜けしましたが、娘が受け止められる歳になっていたことにホッとしたのを覚えています。このエピソードはわが家のクリスマスの鉄板ネタになりました。
【体験者:50代・主婦、回答時期:2025年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。