気の利く同僚・坂本さんの存在
私の同僚には、いつも周りにお菓子を配ったり、誕生日にちょっとしたものをくれる優しいお母さんのような存在の坂本さんがいました。職場では仲良くしていたものの、プライベートでは特に交流もなく、あくまで仕事での関係という距離感でした。
クリスマス前の突然のLINEと困惑
ある年のクリスマス前、私は坂本さんから急に「クリスマスプレゼント、何がほしいですか?」とLINEをもらいました。プレゼントを交換するような仲ではなかったため丁重に断りましたが、その後、坂本さんはプレゼントを用意して渡してきました。
さらに後日、「勝手に送ってるだけなのでお返しはいいですよ」と念を押されましたが、ここでしっかり返してしまうと、毎年のプレゼント交換が定例になりそうで、ちょっとしたお菓子だけお返ししました。
まさかの“噂”と坂本さんの本音
ところが後日、私はびっくりするような噂を耳にします。坂本さんが他の同僚たちに「かなこさんにクリスマスプレゼントを渡したのに、あの人お礼をしてこない」と吹聴していたというのです。
事情を説明すると誤解は解けましたが、聞けば他の同僚たちも「お返し目当て」で坂本さんからプレゼントをもらった経験がある人が多いことも分かりました。いつも「お返しはいらないわ」と言いながら、実際にはお返しをしないと怒るので、みんな徐々に坂本さんとの距離を考えるようになっていきました。
親切が“義務”に変わった瞬間の違和感
この出来事は、私にとって“親切=義務や押しつけ”にならないように気をつけなければいけないと考えるきっかけになりました。
たとえ善意のつもりでも、相手にプレッシャーを与えてしまえば意味がないし、むしろ負担になってしまいます。親切は本来、相手が心地よく受け取れるものであってほしい――そんな思いが強く残る出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2022年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。