新人時代、ちょっと厳しい上司に1度怒られると委縮して、つい同じ失敗を繰り返してしまった経験がある人も多いはず……。今回は、筆者の友人、ゆうかさん(仮名)の職場で起きた、新人を怒鳴る同僚のエピソードを紹介します。

萎縮する新人、怒り爆発の同僚

職場の同僚のりえさん(仮名)は、仕事は早いけれど口が悪く、誰にでも当たりが少し強め。ちょっとした注文ミスでも「何やってるの! 常識ないの?」と大声で叱り、同僚がミスをしても容赦なく指摘するので、職場の雰囲気は常にピリピリ。新人さんたちは萎縮し、先輩に質問することもためらうほどでした。

職場に響く怒声、張りつめた空気

ある日、新人さんがオーダーを間違えてしまいました。慌てて「すみません!」と謝る新人さんに、りえさんは声を荒げました。「そんなこともできないの!? 何のためにここにいるの!」

怒鳴るその声に、新人さんの顔は青ざめ、手は震え、言葉も出ません。周りの同僚たちも固まってしまい、誰も声をかけられませんでした。

静かな一言で状況が一変

その瞬間、カウンター越しに常連客が静かに手を挙げました。「ちょっと待ってください」声は驚くほど落ち着いていました。「私はこの店が好きで、よく来ます。でも、今日のやり取りを見て、正直、気分が悪いです。皆さん、仕事は完璧じゃなくても、一生懸命やっているんですから……」

りえさんは言葉を失い、一瞬固まりました。真正面から意見されるのは初めての経験だったようです。さらに常連客は優しく続けました。「怒鳴るより、フォローしたほうが、店全体の雰囲気も良くなると思います。せっかく素敵なお店なんですからもったいないですよ」

店内は静まり返り、りえさんは赤面し、肩を少し落としながら小さく「……すみません」と言いました。

店内に広がる、穏やかな日常

その日以降、りえさんはすぐに怒鳴ることが減り、少しずつ周りに優しく接するようになりました。
新人さんたちも少し安心して質問できるようになり、店の雰囲気も少しずつ穏やかになったのでした。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。