注文の遅さに激怒、居酒屋での騒動
ある日の居酒屋での出来事。店内は満席で、注文から料理が出るまでに少し時間がかかっていました。そんな中、提供の遅さに腹を立てたある男性客が店員さんへ大声で「金払ってるんだから当然だろ! 早く持って来い!」と怒鳴りつけました。
怒号の居酒屋で、冷静な助け舟
酔いもあってか勢いは次第にエスカレートし、手を叩きながらの怒号。周囲のお客さんが一瞬身をすくめるほどの迫力でした。店員さんは平身低頭で謝りながら、なんとか迅速に対応しようとしますが、緊張から声がわずかに震えていました。
そのとき、隣の席の夫婦の男性がゆっくりと立ち上がり、落ち着いた声で言葉をかけました。「私たちもお金払ってますけど、怒鳴るより待ったほうが、きっと美味しく食べられますよ」
空気を変えた、隣席夫婦
その一言で空気が一変。怒鳴っていた男性客は、まるで我に返ったように目を瞬かせ、言葉を飲み込みました。先ほどまでの勢いはすっかり影を潜め、気まずそうに視線をそらしながら、足早に席へと戻っていきました。
周囲の客たちも、張り詰めていた空気がふっと緩んだのを感じたのか、ほっと胸を撫で下ろしました。「よかった……」と小さくつぶやく人や、夫婦に向かって軽くうなずく人の姿もありました。
帰り際の笑顔が示す、大人の余裕と影響力
その後、夫婦は帰り際に「ごちそうさま」とにこやかに笑い、店を後にしました。その夫婦のおかげで、店内は再び穏やかな空気を取り戻したのでした。
【体験者:30代・会社員、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。