これは転勤族の私の友人から聞いたエピソードです。友人は土地勘がつく前にまた別の地へ転勤ということもしばしば。息子について行くと、そこには見慣れない入り組んだ小道、その先には古びれた小さな公園。そこで起きた出来事とは……。

転勤を前に

私は転勤族で、だいたい2年に一度のペースで引っ越しを繰り返しています。ある日、また転勤が決定。ちょうど息子の誕生日が近かったこともあり、「お別れ会も兼ねて誕生日パーティを開こう」と思い立ちました。

息子に「呼びたい子に招待状を渡してね」と伝えると、「学校以外のお友達もいい?」と。「もちろん! 習い事の子?」と返すと、「公園で友達になった子」と言うのです。そんな子がいたことを、私はそのとき初めて知りました。

やっと渡せた招待状

翌日、息子と一緒にその子に招待状を渡すために公園へ向かいましたが、会えずじまい。その公園はかなり入り組んだところにあり、こんなところに古びた公園があったことを始めて知りました。

何日か通ってみたものの、姿を見かけることはできず。誕生日会の前日、準備に追われていた私に「はっちゃんに招待状渡してくる!」と息子が言い残して家を飛び出していきました。「はっちゃん」という名前も、そのとき初めて聞いたのです。しばらくして帰宅した息子は、「渡せたけど、来られないって」と残念そうに呟きました。

非通知着信

その晩、私が入浴中の時。スマホに着信があり、興奮して眠れなかった息子が電話に出てしまったのです。お風呂から上がると、「はっちゃんから電話きた! 行けないけどおめでとうって。本当は連れてってほしかったって言ってた」と嬉しそうに報告してきました。招待状に書いてあった私の電話番号を見て、連絡してくれたようです。

着信履歴を見ると非通知設定。少し不気味に感じたものの、特に気にせず、翌日の誕生日会は無事に開催されました。

はっちゃんは何者?

引っ越しから1年後、再び迎えた誕生日。ふと「はっちゃんも来られたらよかったね」と声をかけると、息子は「はっちゃんはあの公園から出られないんだよ」と平然と答えました。

「え?」と驚く私に、息子は「昔の子みたいな服で、髪が長くて男か女かわかんない」と続けたのです。その瞬間、背筋が凍るような感覚に襲われました。

もし、転勤辞令が出ず、あのまま毎日あの公園に通い続けていたら、息子はどうなっていたのだろう。今もはっちゃんは息子を待っているのだろうか。誕生日のたびに、はっちゃんへの恐怖の念も、毎年抱かざるを得なくなってしまった出来事です。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。