病院や調剤薬局に行くたびに「マイナンバーカードはお持ちですか?」と聞かれることが増えてきましたね。医療情報や保険番号の新たな確認方法として定着しつつありますが、現場ではちょっとしたトラブルが起こることも。調剤薬局で働く私の体験談を紹介します。

マイナンバーカードの手順

マイナンバーカードを使う際は、情報提供の前に本人確認が必要です。本人確認の方法には「①カメラによる顔認証」と「②暗証番号の入力」の2通りがあります。

個人的な印象では、7割くらいの人は①の顔認証を使っています。読み取られた情報はすぐパソコンに送られ、保険確認や受診歴の確認などに使われます。

患者情報が入ってこない?

ある日、進藤さん(仮名・60代男性)という患者さんから処方せんを受け付けた時「マイナンバーカードの情報がパソコンに入ってこない」というトラブルがありました。顔認証・情報提供の同意は機械で読み取れているのに、何度やり直してもパソコンに反映されません。

「もしかして、別人の情報が紐づけられているのでは……?」ニュースで聞いた事例が頭をよぎります。しかし、原因は意外なほど単純なものでした。

目の前にいるのは患者のご家族

処方せんに記載された生年月日を確認すると、患者さんは平成生まれ。一方、目の前の進藤さんはどう見ても昭和生まれ。つまり、進藤さんはご家族の処方せんを代理で持ってきて、自分のマイナンバーカードを通していたのです。

同じようなケースは、他の患者さんでも何件か起こりました。みんな慣れない仕組みにとまどって、うっかりしてしまったようです。

聞き方ひとつで、流れは変わる

この出来事以来、私は処方せんをもらった瞬間に生年月日や性別欄を確認し、目の前の人物が本人かどうかを確かめるようになりました。明らかに別人の場合は「マイナンバーカードはご本人様からお預かりしていますか?」と聞き方も変えています。

受付では「早く出さなくちゃ!」と慌ててしまう人も多いもの。落ち着いて準備してもらえるよう、小さな声かけでこれからもサポートしていきたいと感じた出来事でした。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年11月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています

EPライター:S.Takechi
調剤薬局に10年以上勤務。また小売業での接客職も経験。それらを通じて、多くの人の喜怒哀楽に触れ、そのコラム執筆からライター活動をスタート。現在は、様々な市井の人にインタビューし、情報を収集。リアルな実体験をもとにしたコラムを執筆中