規定や規則は会社によって千差万別。社内規定を就活や転職活動の重要な判断基準にする方もいらっしゃることでしょう。今回ご紹介するのは、脱毛サロンに勤務する私のお客様の、社内規定にまつわるエピソードです。

内緒の楽しみ

私は看護師として働いています。勤務先の病院では染髪が禁止されているため、髪を結んだときに見えない位置に、こっそりインナーカラーを入れるのが数カ月に一度の楽しみ。

私には学生時代から10年以上通っているお気に入りの美容院があり、インナーカラーも、もちろんそこにお願いしています。そんな密かなオシャレが、ある日とんでもない展開を迎えることになるとは思いもしませんでした。

隣にやってきたのは

その日もいつものようにブリーチをしてもらい、時間を置いていると、ふと誰かが隣に座る気配。何気なく目をやると、そこにいたのはなんと、勤務先の婦長さん。心臓が止まりそうになりました。とっさに下を向き、寝たふりをします。

そこへ戻ってきた担当の美容師さんが、いつもの調子で「今回も婦長さんにバレないようにピンクのインナーカラーいっちゃいますか~!」と明るく声をかけてきたのです。私は慌ててスマホを取り出し、画面に「横に座っているのが婦長さんです!」と表示。美容師さんは一瞬で顔色を失いました。

ピンクか黒か

「どうする? ピンク塗る? それとも黒染めする?」と小声で聞かれ、私はかなり迷いました。でも、ここまで来たらもう引き返せない。バレていないことを祈りつつ、「ピンクでお願いします」と小さくうなずきました。

施術が終わり、お会計を済ませて店を出ようとしたその瞬間、出口で婦長さんと鉢合わせ。「あなた、いつも染めていたの?」と問いかけられ、私は観念して「はい、すみませんでした」と頭を下げました。

怒られると思ったら

ところが、婦長さんは「その色、いいわね。次は私も内側だけ染めてもらおうかしら」と微笑んだのです。「染髪は禁止だけど、あなたのように上手にまとめればいいのかもしれないわね。古いルールは、見直していかないとね」と続ける婦長さんの言葉に、私は思わず感激してしまいました。

怖い存在だと思っていた婦長さんの、柔らかくて前向きな一面に触れた瞬間を、今でも忘れられません。“髪色で人を判断するな”と思っていた私でしたが、人を見た目で判断していたのは自分自身だったのかも、と自分を見つめ直すきっかけになった出来事です。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。