小さいおじさん、あらわる
これは、娘が3歳だった頃の話です。彼女にしか見えていない「小さいおじさん」は、白髪頭で白いタンクトップ姿、手のひらサイズの大きさだと教えてくれました。
おじさんの正体が気になりますが、家族の誰も霊感はなく、気配を全く感じません。マンションは新築で、私たち家族がその部屋の最初の居住者。つまりおじさんが前の住人の幽霊、という可能性もありません。
対処法が分からない
娘はたびたび、おじさんに向かって話しかけるようになりました。その様子を心配しながらも、私はどう対処していいか分かりません。「成長すれば状況も変わるだろう」と考えつつ、ただ見守るしかありませんでした。
祖母におじさんの話をすると、態度が一変
祖母が遊びに来たときのことです。娘はいつもと変わらず、小さいおじさんに話しかけます。その様子を見て不思議がる祖母に、状況を説明すると態度が一変。慌てて家を飛び出し、どこからか玉串らしきものと清めの塩を調達してきました。部屋中で玉串を振りかざし、必死でお祓いをする祖母。玄関に清めの塩を置いたところで終了。
翌日以降「おじさん、いなくなった」と、娘が話しかけることはピタリとなくなりました。
おじさんの正体
祖母には、おじさんの風貌を聞いて、ピンと来る人物がいたようです。思い当たるのは、自分の祖父。かつて妊娠したとき「男でなければ認めない」と言われ、大喧嘩の末に縁を切った相手だそうです。その祖父が、「可愛い孫娘の前に化けて出てきた」と感じたようでした。
本当に怖かったのは
小さいおじさん騒動が落ち着いてほっとしたものの、いつも温和な祖母が、鬼のような形相でお祓いする姿が何よりも怖かったです……。そんなこと、本人には口が裂けても言えません。この秘密は墓場まで持っていくことにします。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2019年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:S.Takechi
調剤薬局に10年以上勤務。また小売業での接客職も経験。それらを通じて、多くの人の喜怒哀楽に触れ、そのコラム執筆からライター活動をスタート。現在は、様々な市井の人にインタビューし、情報を収集。リアルな実体験をもとにしたコラムを執筆中。