“医者の妻”ってどんな人だろう? 想像したことがある方も少なくないのではないでしょうか。今回ご紹介するのは、歯科医院に勤務する友人の実体験です。酔いつぶれてしまった院長を迎えにきた奥さんの意外な姿とは……。

人気クリニック

私が働いている歯科医院は、自由診療中心のクリニックで、特に矯正治療とホワイトニングが人気。従業員は割引価格で矯正できるという特典もあり、それを目当てに応募してくる人も少なくありません。私自身もその制度を利用して、歯並びを整えたひとりです。

忘年会で

ある年の院内全体の忘年会でのこと。院長が飲みすぎ、酔いつぶれてしまいました。すると、モデル並みの美人と噂される奥様が迎えに現れたのです。院長婦人なら、矯正もホワイトニングもやり放題なのだろうなぁと、うらやましく思いながら私は奥様とご挨拶しました。

ふと目に入った奥様の口元に、少し驚きました。普段だったら院長が矯正を勧めるような、「かみ合わせが良い」とは言えない歯並びだったのです。

院長の告白

酔った院長は、私たちスタッフの前でこう言いました。

「毎日整った歯列を見ていると、かみ合わせの悪い歯列が恋しくなるんだよ」

まさかの告白に、周囲はびっくり。奥様自身はその言葉に恥ずかしがる様子は全くなく、微笑みながら院長を介抱。二人は穏やかで、まさに“相思相愛”といった仲の良い空気をまとっていたのを覚えています。

見た目を超えて

歯科医院で働いていると、どうしても口元に目が行きがちです。院長のフェチには驚きましたが、それ以上に“ありのまま”に自信を持つ奥様の姿を見て、見た目に気を取られていた自分がちょっと恥ずかしくなってしまいました。

余談ですが、院長のお子様もあまり歯並びが良くないのですが、今のところ矯正はしていません。本人が将来、自分の意志で矯正を希望したら応じるが、院長ご夫妻は自然な歯並びを尊重したいという考えなのだそう。

そんな少し変わった、でも家族愛に溢れた院長のクリニックには今日もたくさんの患者さんがいらっしゃいます。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。