毎日のようにテレビやネットで報道されるたくさんの事件。どうしても自分とは関係ないと思ってしまいがちですが、事件や事故はいつ巻き込まれてもおかしくないもの。今回は、脱毛サロンで働く私のお客様が事件に遭った時話をご紹介します。

求人広告を見て

ある日、夫の病院で求人広告を出したところ、予想以上に多くの応募がありました。その中の一人が「生活がとても苦しくて」と訴えてきたのです。

応募時期が遅く、資格もなかったため採用には至りませんでしたが、「掃除スタッフでも構いません」と懇願されたことで、夫は彼女を自宅の清掃スタッフとして雇うことに。

小さな違和感

彼女は掃除が丁寧で受け答えも明るく、私も夫も満足していました。ただ、次第に家の中の物が少しずつなくなっていったのです。最初はパンやティッシュなど些細なものでしたが、やがて電池や本など、少しずつ高価なものが消えていきます。

それでも、頑張っている彼女を疑いたくなくて、「気のせいかもしれない」と自分に言い聞かせました。

一枚のメモ

ある日、祖母から形見として貰った大切にしていた宝石のひとつが宝石箱から消失。さすがに見過ごせず、夫に報告し「警察を呼んでほしい」と頼みました。

ところが夫は「警察は呼ばなくていい」と言い放つと、一枚のメモを宝石箱に入れて「これで大丈夫」と呟きました。次の彼女の出勤後、宝石箱を確認すると、そこには盗まれた宝石が。

静かな解決

驚いた私は「メモに何と書いたの?」と尋ねると、夫は「返してください」とだけ書いた、と静かに言いました。それ以来、彼女が盗みを働くことはありません。夫はこうなることも予想した上で採用したのでしょうか。

警察を呼ばずに、力も使わずに、盗まれたものが戻ってくる方法があるとは思ってもみませんでした。あの時の、夫の冷静沈着な対応と一枚のメモの効力を私は忘れることはないでしょう。

【体験者:60代・主婦、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。