人間関係の中で、誰もが一度は感じたことのある「この人なら信頼できる」という安心感。しかし、その信頼が少しずつ揺らぎ始めたとしたら——。今回は筆者の友人が体験した、人間関係の裏側にまつわるエピソードを紹介します。

頼れる先輩ママ

私の息子の同級生のママ、エミさん(仮名)は、中学時代の先輩です。昔から面倒見がよく、後輩思いの人でした。ママになった今でも変わらず明るくて社交的。知り合いも多く、誰とでも仲良くなれる姿を、私は尊敬していました。

3人の娘さんを育てているエミさんは、いつも子どもの話をしてくれます。「中学生の長女がテニスの選抜に選ばれたの」「次女はいつもお手伝いしてくれるから本当に助かるの」などと笑顔で話す姿は、理想的な母親のように見えていました。

友人から聞いた衝撃の事実

そんなある日、久しぶりに高校時代の友人と再会。子育ての話で盛り上がっていたところ、友人が急に真剣な表情になりました。「うちの娘、中学のテニス部でマユちゃん(仮名)って子とペアなんだけどさ……」その“マユちゃん”はエミさんの長女。

話を進めるうちに、友人の表情はどんどん曇っていきます。「練習もサボるし、態度も偉そう。それに、試合に負けたら人のせいにするんだよ。しかもそのお母さん、“うちの子の足を引っ張らないで”って私に直接文句言ってきたの!」信じられませんでした。あのいつも穏やかで優しいエミさんが、そんなことを……。

さらに衝撃だったのはこの後。「マユちゃん、選抜に選ばれたって聞いたけど」と聞くと、友人はきっぱり「そんなわけないよ。選ばれたのは別の子!」

重なる違和感

その話を聞いた数日後、息子のスポ少で他のママさん達と話をしていると、自然と中学校の話題に。中学生の子どもはいなかった私は、「やっぱり中学校って大変?」と聞くと、「スポ少も大変だけど、中学校も忙しいよ。大会も多いしね」

続けて「あとは人もね……。私の娘、テニス部なんだけど、ある親子が特に問題でさ。エミさんって人なんだけど、幸子さん(私)の息子さんと学校一緒だよね?」と、まさかのエミさんの話。そして「幸子さんもエミさんには気をつけた方がいいよ」と話します。

信頼が揺らいだ日

一瞬、胸の奥が冷たくなりました。「え? なんで?」と聞くと、少し言いにくそうに口を開きました。「エミさん、幸子さんの息子さんのこと、“扱いにくい乱暴な子”って言ってたよ。でも、スポ少でいつも見てるけど、全然そんなことないし、むしろ素直でいい子じゃん」その言葉に、心の中で何かが崩れていくのを感じました。

先輩ママの裏の顔

その後も、別のママ友から似たような話を聞きました。どうやらエミさんは、他人の話題を話のネタとして広めてしまうタイプだったのです。表ではにこやかに接してくれていたのに、裏では違う顔を見せていた——。その事実を受け止めるまで、少し時間がかかりました。

ただ、怒りよりも先に浮かんだのは「距離を取ろう」という気持ち。信頼を失った関係を無理に続けるよりも、静かに線を引く方が、自分も家族も穏やかでいられると思ったのです。

距離の取り方を知る

人の表と裏を完全に見抜くことはできません。けれど、どんなに親しく見える相手でも、依存しすぎないことが大切なのだと学びました。適度な距離感は、信頼を壊さないための“防波堤”のようなもの。あの出来事以来、私はどんな人間関係にも、小さな境界線を意識するようになりました。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。