気づけば、いつも席を立つ先輩
私が働く部署には、喫煙者の男性社員が数名います。昼休みに吸いに行く分には何も思いませんが、特に先輩の上野さん(仮名)は、業務中にもたびたび席を立つ人でした。
「トイレ行ってきます」と言いながら、そのまま喫煙所へ行くのがいつもの流れです。戻ってくるとタバコのにおいと手には缶コーヒー。みんな気づいてはいましたが、誰も口には出さずスルーしていました。
忙しいタイミングでの“喫煙タイム”
そんなある日、部署でシステムトラブルが発生しました。電話対応や復旧作業、上司への報告など、全員が慌ただしく対応に追われる中、上野さんがふいに「ちょっとトイレ」と席を立ちました。
その瞬間、私は思わず心の中で「まさか、また喫煙所?」とつぶやいてしまいました。誰もが焦りながら動いているのに、上野さんの席だけぽっかり空いています。時計を見れば、もう15分以上戻ってきません。周りの女性社員たちも「まただよね……」「この状況で?」と小声でざわついていました。
ついに我慢の限界が
ようやく戻ってきた上野さんに、ついに女性社員たちが口を開きました。「上野さん、今どこ行ってたんですか?」「タバコ休憩がOKなら、私たちも“お菓子休憩”していいですか?」冗談めかしてはいましたが、声には本気のトーンが混じっていました。
上野さんは苦笑いしながら「いや〜やめられなくてね」と言い、場の空気は少しピリッと。私もつい「じゃあ私たちも、チョコレート補給行ってきますね〜!」と口を挟んでしまいました。
その一言にみんながクスッと笑って、ようやく緊張がほどけました。上野さんも「まいったな〜」と笑っていましたが、その表情は少しバツが悪そうでした。
その後の変化と“対等な休憩”
その出来事以来、上野さんは仕事が一段落したタイミングでしか喫煙所に行かなくなりました。一方で、私たち女性社員も「じゃあ甘いもの休憩、取りましょうか」と、午後にチョコレートやクッキーを分け合うのがちょっとした恒例に。
「お互いに、ときどき息抜きしながら働けるのが一番だね」と笑い合える空気ができて、職場の雰囲気が少し和らいだ気がします。あの“タバコ騒動”が、結果的には職場を少しだけ居心地よくしてくれたのかもしれません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。