私の友人・石川さん(仮名)が久しぶりに職場の飲み会に参加したときのことです。子どもの世話をしてくれている夫の話をしたところ、周囲から「イクメン」「えらい旦那さん」と褒める声が。“育児をする男性が特別扱いされる”空気に違和感を覚え……。

久しぶりの飲み会にわくわく

私の働く会社では定期的に飲み会が開催されているのですが、子どもがまだ幼稚園に通っていることもあり、ここ数年はなかなか参加できずにいました。でもその日は、たまたま夫の仕事が早く終わり、「今夜はゆっくりしておいで」と言ってくれたのです。

久しぶりに夜の街を歩くと、解放感があり胸が弾みました。みんなと顔を合わせて乾杯をした瞬間、「たまにはこういう時間もやっぱり大切だな」と感じました。

「旦那さんえらいね!」に違和感

お酒も入って和やかになった頃、男性社員に「今日はお子さんどうしてるの?」と聞かれました。「夫が見てくれています」と答えると、「え〜! 旦那さんえらいね!」「イクメンなんだ?」と、周囲から次々に声が上がりました。

悪気がないのはわかっていました。むしろ場を盛り上げようとしてくれていたのだと思います。それでも、心のどこかにモヤっとしたものが残りました。夫が子どもを見てくれるのは“すごいこと”で、私が毎日同じようにやっているのは“当たり前”。そんな空気が、なんとなく引っかかったのです。

笑いながら場を変えた、女性上司のひとこと

そのとき、向かいに座っていた女性の上司・原野さん(仮名)が笑いながら言いました。「旦那さんもえらいけど、石川さんも頑張ってるでしょ。夫婦でお互い支え合ってるってことで、どっちもえらいよ」その言葉にみんなが「たしかに!」と笑い、場の雰囲気が明るくなりました。

私も「育児はチームで頑張ってるんです」と冗談めかして返すと、周囲から「いい言葉!」と拍手が起きて、笑いに包まれました。原野さんの言葉がなかったら、私はせっかくの楽しい夜にモヤモヤを引きずったままだったと思います。

“えらい”のは、どちらか一方じゃない

家に帰って夫に「今日、旦那さんイクメンだねって言われたよ」と話すと、彼は少し照れたように笑って「いや、普通のことしてるだけだよ」と言いました。お互いに支え合って、日々を過ごしている。それが幸せなんだと、改めて感じました。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。